はじめに
スキンケアを中心にビューティーブランドを展開する「ORBIS(オルビス)」。オルビスは1987年創業当初から、世の中の当たり前に問いを立て、新しい価値を生み出してきました。カタログを中心とした通販会社のパイオニアとして成長してきましたが、2018年にリブランディングをして従来のビジネスモデルから脱却し、スキンケアを中心としたビューティーブランドとして、お客様と長期的な関係性を築けるブランド作りを行っています。
今回は、同社のCX統括部 CX推進担当 部長代理 兼 CXデザイングループ グループマネジャーを務める瀧明 亮さんと、CRM統括部 CRM推進担当で部長代理を務める藤田 剛さんに、 チーターデジタルのMAツール「 Marigold Engage+ 」を導入した背景や取り組んでいるMA施策、さらには今後の展望を伺いました。
MAツール刷新の背景|3つのツールを統合し、運用工数削減と施策の高度化へ
— まずお二人が所属する部署はどういった役割をお持ちですか?
瀧明さん:
CX統括部は、ウェブ・アプリのお買い物体験を中心にシームレスな顧客体験を設計・提供し、ブランド定着からLTVの最大化の取り組みを行っています。

藤田さん:
CRM統括部は、リピートマーケティングの領域において、LTVの最大化を目指し、お客様がお買い物をしやすいよう施策を設計しています。

— MAツールのリプレイス検討に至った背景を教えてください。
瀧明さん:
私たちの課題として、RFM(Recency-購入日・Frequency-購入頻度・Monetary-購入金額)のデータ以外にも行動データやお客様の肌悩みなどのゼロパーティーデータを活用して顧客の解像度を上げ、コミュニケーションを進化させたいという思いがありました。一方で、コミュニケーションをとるインフラ環境とヒューマンリソースの運用コストがかかっていたので、以前使っていたMAツールをリプレイスするほうが良いという判断になりました。
当時は以前導入していたツールを、事業戦略や組織編成に合わせて都度アジャイル開発してきたため、データ構造が複雑で、複数のツールが煩雑に連携されている側面がありました。その結果、システム負荷も運用コストも高く、新しい取り組みをしようとなっても、PDCAのP(Plan)とD(Do)の間で慢性的にボトルネックがありました。
藤田さん:
以前は、セグメント抽出、コンテンツ作成、配信管理で3つのツールを繋ぎながら運用していたため、現場の負荷がとても大きかったです。特に大変だったのは、コンテンツの番号と配信セグメントの番号、発射台の施策の番号を、マンパワーで合っているか確認していたことです。違う番号が紐づき、本来届けたいお客様ではない方へ送ってしまうというエラーも起きてしまっていました。また、以前のツールでは予約配信もできなかったため、配信し終わるまで自席から離れられず、メールを100万人に送るなど大規模な配信の時はとても大変でした。
瀧明さん:
もう一つの課題は施策の高度化です。セグメント配信に行動データを使いたかったのですが、以前の環境は、データ連携やデータマート作成のために、都度、外部ベンダーに開発をしてもらう必要がありました。その設定業務の負荷が高いので、やりたいことがあっても、普段の業務も大変な中で、中々着手できない状況でした。
Marigold Engage+ 選定の決め手|使いやすさと手厚い伴走支援
— Marigold Engage+ を選んだ理由を教えてください。
瀧明さん:
私がMAツール選定のプロジェクトリードをしていたのですが、以前は業務負荷が大きかったので、まずは施策実行をワンストップでクイックに1つのツールでやりたいという思いが強かったです。それから、コンテンツの出し分けなど、クリエイティブの柔軟性も必要でした。以前のツールでも名前などテキストの挿入はできたのですが、Marigold Engage+ には部分的にコンテンツを出し分ける機能があります。それらを考えるとチーターデジタルは一番コストバランスが良かったです。また弊社では元々実施施策が多く、200〜300本の施策を移行する必要がありました。プロジェクトも多いので伴走支援が必要でしたが、チーターデジタルが一番手厚い印象を受けました。
藤田さん:
他社も伴走支援の体制があったのですが、ツールが一番使いやすそうなのはMarigold Engage+ でしたし、肌感ですけど、私もチーターデジタルの営業担当の方とお話をする中で、しっかり伴走支援してくれそうという感覚があり、我々の運用課題に一番フィットしていると感じました。初期提案はメール施策がメインでしたが、今後のアプリやLINEでの配信も含めて考えると、他社のMAツールは費用感が合わなかったですし、機能もオーバースペックだと感じました。実際に使いたい機能はそれほどないですし、SQLを書けるメンバーもいないので、コーディングなしで扱える Marigold Engage+ が一番合っていると思い導入を決めました。
導入〜運用プロセス|施策の移行と自社での運用開始
— Marigold Engage+ の導入プロジェクトを振り返るとどんな印象ですか?
瀧明さん:
想定できていなかった課題が判明し、途中で進捗が遅れる場面もありました。当初の計画では工期に無理がありましたし、双方からの情報提供・コミュニケーションも足りなかったと思います。プロジェクトが停滞しそうになってしまったのですが、チーターデジタル側で、伴走支援の体制を強化してくださり、「一緒に頑張ります」と足並みを揃えてマインドセットしていただけて良かったです。社内の担当メンバーのモチベーションアップにも繋がりました。
— 以前のMAツールからの施策の移行はどのように進めましたか?
瀧明さん:
当初は運用していた施策全てをそのまま移行しようとしていましたが、元々のデータモデルが複雑だったのでスムーズではない状況がありました。そこで施策をそのまま移行させるのではなく、データ構造を整えながら、Marigold Engage+ に合わせて必要な情報だけ連携して設定するよう方向転換しました。
藤田さん:
本来は行動データを使って1to1の施策に高度化していきたかったのですが、ここでもデータモデルが障害になっていました。そこで優先度が高い50個の施策をまず移行することにしました。
瀧明さん:
新しいデータモデルはチーターデジタルの担当者と擦り合わせしながら作らせてもらいました。以前はセグメント抽出する際に、構造が複雑すぎてメンバーも理解しておらず、どのデータを使えばいいのかわからない状態でした。今回、チーターデジタルと一緒に整理をしたことで、メンバーの理解も深まりました。データを整理し絞り込んで Marigold Engage+ に入れたので、構造がクリアになって使いやすくなりました。またデータ連携図においても細かく設計していただき助かっています。
— オルビス社内での施策実装状況はいかがでしょうか?
瀧明さん:
昨年12月にチーターデジタル側の伴走支援による初期設定が完了し、そこから2ヶ月で自社側でもスピーディーに追加施策の実装ができています。以前でしたら、まず外部ベンダーのリソースを確保して、他部門を巻き込む必要があり、プラス1〜2ヶ月はかかっていました。そう考えると運用の工数もとても圧縮できたと思います。
導入成果|新たな施策実装と運用負荷軽減
— Marigold Engage+ を活用し新たに取り組んでいるMA施策はありますか?
瀧明さん:
多くの施策がありますが、現在は行動データを活用した施策にも取り組んでいます。たとえば、カート放棄フォローや、新規獲得施策(商品閲覧をしたが未購入の方へのリターゲティング)を実施しています。また、スキンケアの肌悩みがわかれば、購入履歴がなくても他の行動データで補完して、購入検討者に向けておすすめの商品を案内できるので、それにも着手する予定です。
— 効果が良かった施策はありますか?
瀧明さん:
お正月福袋の未購入者にリターゲティングしたメール施策が良かったです。開封率もCVRも良かったので、これからはECサイトの閲覧情報に沿った案内を、普段のコミュニケーション文脈に合わせて送ることで、セールやクーポンなしでも成果を上げていきたいと考えています。テンプレを固定化して、なるべく効率的に施策を実装していきたいですね。
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— 運用面での変化はありましたか?
藤田さん:
Marigold Engage+ は、GUIが直感的で、フィルタ機能でのセグメント配信もできるようになりました。以前のツールは、CRM推進の担当者しか施策設定ができなかったので、他部門が施策を実施する場合は、依頼書を書いてデータ抽出してもらい、その後CRM部門で施策設定をしていました。現在はCRM推進だけではなくCX推進のメンバーも、全員が触れるようになり、元々目指していた「ツールの民主化」ができていると感じています。
配信設定についても、以前は2週間前から準備をしていて、前日の配信設定は2〜3時間かかっていました。これが今回導入したチーターデジタルの Marigold Engage+ では半分の時間になり、大幅に改善されました。
瀧明さん:
以前は、まだ成果が出るかわからない施策実装のために、開発を入れないといけないのがネックでしたが、Engage+ではA/Bテストも実施しやすいです。施策の実施前に、どれくらい成果が出るのかを検証するのを、売上目標を持っている組織が行うのは大変です。なので、そこはCX側が担うような体制が作れています。
今後の展望|行動データを使った施策の高度化とオムニチャネル化
— 今後はどのようなことに取り組んでいきたいですか?
瀧明さん:
行動データを活用した、本格的な施策の高度化はこれからです。企業主体ではなく、お客様の行動に寄り添った、ナラティブコミュニケーションも注力していく予定です。まずはA/Bテストを実施し、パターンを作って効率的に実行して成果を出していく計画です。
様々なチャネルがあるので、オムニチャネルでプッシュコミュニケーションを使えるようにしたいですね。具体的にはフォロー施策を実施する時に、メール、アプリ、DMなどのチャネルを使い分けたいと考えています。メールやアプリプッシュと比較し、LINEやDMはコストが嵩みます。しかしながら、LINEは開封率が高いですし、はがきもオルビスがカタログ通販から始まっていることもあって、反応が良いというアドバンテージがあります。現在は全てのチャネルで通知を送っていますが、メールが未開封ならLINE、それでも届かないならDM、というように使い分けていきたいと考えています。
藤田さん:
お客様それぞれの肌悩みは異なります。たとえば、美白美容液をおすすめしたい時に、これまでは関連商品を購入された方にメールを送っていました。しかしこの場合、「にきび対策の商品を購入しているが、美白にも興味がある人」への商品レコメンドはできません。このようなお客様を配信対象にするために、ECサイトやアプリなどの行動データを使いたいと考えていました。
社内で「相関関係」と「因果関係」のワーディングを使うのですが、これまでは「相関」で「購入した」人をターゲットにしていました。これからは「関心」も捉えていきたいという狙いがあります。これは購入履歴だけでは拾えないですが、行動データではできると考えています。
— Marigold Engage+ の機能で特に活用したい部分はありますか?
瀧明さん:
Engage+のダイナミックブロック(条件に応じた内容の出しわけ機能)やループブロック(個人の行動履歴に応じた内容の出しわけ機能)を使って、より深く行動データを見極めて施策実施をしたいと考えています。以前は3つのツールを使っていたのでA/Bテストをするのも、リソースがかなりかかりました。クリエイティブの精度も上げたいですし、MAで成果が出たら知見を活かして、紙(DM)でも同様の施策をやりたいと考えています。
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チーターデジタルヘの要望|データモデリングとMA運用の効率化
— 最後に、今後のプロジェクトにおけるチーターデジタルへの期待や要望を教えてください。
瀧明さん:
データモデリングは、一旦最小限で作っているので、今後課題になると思っています。今は検証フェーズなので、施策に必要なものだけ都度入れている状況ですが、このままやり続けていっていいのか、今後もっと知見をいただきたい部分です。また、配信メディアも増やしていきたいと考えています。アプリのSDKが公開されたという案内を見たので、その活用も相談していきたいです。
藤田さん:
まずは今後のさらなるMA運用の効率化に向けて、オペレーション面の相談させていただきたいですね。施策は増えていくのに、リソースは増えるわけではありません。大量の施策を効率的に回していくために、オペレーションをどうしていけばいいか、このあたりもチーターデジタルに相談したいと思っています。他社の検証方法など、事例を共有していただけると嬉しいですね。
※ 本記事は2025年3月時点の情報です
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