現代のロイヤルティプログラムは、従来のポイントやリワード形式から、パーソナライゼーションやマルチチャネル体験、複雑な階層構造などを活用して購入行動を促進する、より高度なプログラムへと進化しています。最新のロイヤルティ戦略を構築するには、最先端のプログラムに共通する重要な機能が必要です。これらにより、プログラムは高度にパーソナライズされ、魅力的なものとなります。
Forresterの最新調査 “Retail Topic Insights 2 Survey, 2024” では、「米国のオンライン消費をする成人のほぼ半数が、ブランドのロイヤルティプログラムに参加している場合、衝動買いをしやすくなる」と報告しています。(出典:Forrester, “Loyalty Programs Motivate Millennial Purchases,” 2024年11月14日)。自社に合ったロイヤルティプログラム機能を適切に組み合わせることで、ロイヤルティの高い会員をより惹きつけることが可能となり、収益増加、会員数の拡大、さらにはより大規模な顧客基盤の構築が可能になります。

MarigoldのLoyalty Center of Excellenceの責任者であるロジャー・ウィリアムズは次のように述べています。
「単にポイントやクーポンを求める層と、それ以上を期待する層との間に大きなギャップがあります。……マーケター主体や負債管理中心のロイヤルティプログラムは、顧客にとって魅力的ではありません。」
顧客が求めているのは、さまざまな機能や特典を含む包括的なパッケージであり、多様なリワード(報酬)機会を提供するバランスの取れた総合的なプログラムです。
成功するロイヤルティプログラムに必要な主な機能
現在のプログラムを強化したり、新しいプラットフォームへ移行したりする際に検討すべき、ロイヤルティプログラムの主要な機能は以下の通りです。
会員ランク構造とステータスの認識
カスタマイズ可能なランク構造を活用して、最もロイヤルティの高いメンバーを優遇し、独自の獲得機会や特典を提供し、その価値を認識することが重要です。プログラム内でランクが一つ上がるたびに、達成感や特別感、高いステータスを感じることができます。例えば、レストラン業界における事例として、Nando’sのロイヤルティプログラム「Nando’s Rewards」(会員は「Chillies」と呼ばれる)が挙げられます。
Nando’s Rewardsプログラムは、スタンプカード式の仕組みにChilli(唐辛子)をテーマにした魅力的な特典を加え、よりユニークなプログラムに仕上げています。顧客は、対象となる商品を購入するたびに「Chilli」を獲得し、それを次回以降の来店時にさまざまなメニューと交換できます。この仕組みによって、顧客は次のランクへ進む旅を楽しみながら進めることができ、ランクが上がるごとにより多く、より良いメニューアイテムを得られるようになります。

また、小売業界においてもランク制度は非常に効果的です。たとえば、NordstromやBloomingdale’sは、それぞれの会員「Nordy Club」や「Bloomingdale’s Loyalist」に対し、シークレットセールやセールへの先行アクセス権などの特典を提供しています。こうした特別なステータスはロイヤルティに大きな影響を与えます。実際、Marigoldの「2025 Relationship Marketing Trends: Brand Rankings Report」によると、2024年7月から8月に調査を受けた消費者の88%が、限定オファー、サービス・イベントへの優先アクセスをロイヤルティプログラムの最も魅力的な要素の1つとして挙げています。消費者は常に次の最良のオファーを探しており、最上位または上顧客に対しても同様のニーズがあるのです。

プログレッシブプロファイリング
既存の会員について、より深く理解しましょう。プログレッシブプロファイリング機能を活用することで、会員の興味や好みに関する追加情報を収集することができます。ウェブやアプリ内の体験を通じて、ゼロパーティデータ(ZPD)や貴重な嗜好データを直接収集すれば、プログラム内にプログレッシブプロファイリングを構築できます。これにより、会員向けのメッセージを飛躍的にパーソナライズすることが可能になります。現在では、多くのブランドがアプリを提供しており、このプロファイリングはアプリレベルにまで適用されています。
Marigoldの顧客でもある、ヨーロッパのギフト販売会社Smartboxは、非繁忙期である夏の間に、顧客のエンゲージメントを向上させるため、一連のコンテストやゲームを実施しました。これらのゲーム後のオンライン体験を通じてプロファイル情報を収集した結果、購入量が28%増加し、平均購入数は58%増加するという成果を上げました。

ゲーミフィケーション
ゲーミフィケーションを活用すると、さまざまなマイルストーンを設けてメンバーの達成度をバッジで可視化したり、スコア表で順位を競わせたりすることができます。ゲーミフィケーションが効果的な理由のひとつは、そこに生まれる「ワクワク感」です。また、一部のメンバーが持つ競争心をうまく刺激する効果もあります。こうした競争心を抑える必要はありません。むしろ思いきり活用しましょう。
たとえば、KFCがMarigold Loyaltyを活用して展開した「KFCアプリ」では、リニューアルしたロイヤルティプログラムのローンチ直後に100万人の新規会員を獲得することに成功しました。KFCの最高デジタル責任者であるポール・トゥスカーノ氏は、「頻繁に訪れるお客様を認識し、他のリワードプログラムでは得られない特典の機会をさらに提供したい」と述べています。また、「消費者はブランドに共感し、ワクワクした気持ちを抱くようになります」とも語っています。
アプリ内で多彩な機能を提供しているため、KFCをよく利用するお客様にとっては、導入をためらう理由がないほど魅力的な仕組みになっています。この詳細は、トゥスカーノ氏が動画で説明しています。

シングルメンバービュー
会員のすべてのデータを一元化し、彼らの全体像を明確に把握する「360°ビュー」を構築します。これにより、その会員が誰で、何を求めているのか、そしてどのように長期的な関係を構築できるかを簡単に理解できます。このデータは、マーケティングメールやSMS、プッシュ通知などのパーソナライズをより効果的に行うのに役立ちます。これにより、単に売り込みをするのではなく、顧客に「自分を理解してもらえている」と感じさせることができます。

ロイヤルティプラットフォームに購入履歴、嗜好、誕生日などの会員プロファイルデータを保存することで、高度にパーソナライズされたコミュニケーションを実現できます。一部のブランド(基本的なポイントプログラムのみを持つブランドなど)は、顧客について詳細な情報を保持していないことも多いため、メッセージやプログラムの内容をパーソナライズすることが難しくなります。こうした情報を活用することで、他ブランドとの差別化を図ることができます。
会員の識別
ユニークな会員識別子(メールアドレス、会員ID、デジタルカード、携帯番号など)を活用して、チャネルを横断して会員を認識しましょう。
消費者の情報は常に最新かつ正確であることが重要です。これにより、プログラムの仕様に基づき、個々の顧客のリアルタイムの反応を記録できます。これらのユニークな識別子から得られる重要なデモグラフィック情報を基に、たとえば地域限定オファーの提供や希望するコミュニケーションチャネルへの絞り込みなど、パーソナライズをさらに強化できます。最終的には、こうした要素が組み合わさってプログラムのパーソナライズ精度を高め、顧客体験を向上させ、ロイヤルティを強化することにつながります。

ポイント獲得ルール
購入、アンケート、商品レビュー、イベント参加など、トランザクション以外のエンゲージメント行動に対してもポイントを付与するルールベースの構成を用いることで、あらゆるロイヤルティ施策を向上させることができます。たとえば、Great Wolf Lodgeでは、ロイヤルティプログラム導入前はリピーターの比率が十分とは言えませんでした。しかし、新たに導入した「Voyagers Club」では、宿泊代だけでなくギフトショップや館内レストランでの支出など、滞在中に発生するすべての支出をポイント付与対象に設定。この取り組みの結果、同社のロイヤルティ施策は賞を受賞するまでに成功を収めました。開始から最初の12カ月で170万人ものメンバーを獲得し、リピート客の割合を二桁成長へと導いています。

ダイナミックセグメンテーション
高度な条件に基づいて、メンバーをあるセグメントから別のセグメントへ「動的」に移行させる機能です。メンバーのプロファイルに新たな嗜好情報などが追加された場合、その顧客のセグメントを自動的に変更し、より積極的なエンゲージメントへと誘導できます。消費者の反応やエンゲージメントは刻々と変化し、ブランドとの関わりが深まるにつれてロイヤルティが高まっていきます。このリアルタイムなデータを活用することで、各顧客セグメントに響く、よりパーソナライズされたタイムリーなリワード体験を提供できます。
パーソナライズされたオファー
オンラインや店舗内で高度にパーソナライズされたプロモーションを提供する機能です。一回限りのクーポンやPOSで即座に認識されるクローズドループ型オファーといった、よりスマートなオファーは非常に人気があります。顧客にとって記憶に残る体験を提供することで、ブランド支持者(アドボケート)のコミュニティを拡大します。すべての顧客行動を評価しリワードが付与される、高度にカスタマイズされたロイヤルティプログラムは、顧客と長期的な関係を築くために欠かせません。

Marigold Loyaltyを活用するDonatosは、ロイヤルな顧客基盤をさらに拡大し、リピート利用とロイヤルティの向上を実現しました。同社の「Donatos Pizza Love Rewards」プログラムでは、オンデマンドリワードを通じて合計98,000件以上の取引が記録されており、プログラム会員数は23%の増加を見せています。プログラム全体でプログレッシブプロファイリングを活用することで、顧客の嗜好に合わせた最適なターゲティングを行い、この成果を達成しています。

デジタルスタンプカード
従来の紙のカードをデジタル化したスタンプカードは、オンラインでも店舗内でも、消費者に繰り返し購入してもらう手法の一つです。会員に特定の商品を購入する、または特定のアクションを実行するよう促すことで、行動にインセンティブを与え、その進捗を追跡します。たとえば、購入に加えて、顧客アンケートの回答やレビューの記入といったアクションも対象になります。これらは通常、ロイヤルティプログラムのアプリやウェブサイトのマイページ上で利用できます。
以下は、他のファストフードチェーンやスーパーマーケットが、デジタルスタンプカードを活用して顧客を惹きつけている例です。


分析機能
ロイヤルティプログラムにおける分析機能では、キャンペーンの成果、運営状況、会員の行動データを分析するための高度かつカスタマイズ可能なダッシュボードを提供します。これにより、新たなインサイトを得て、それをすぐに実行可能なキャンペーンに変換することができます。パフォーマンスや信頼性の向上、自分でカスタムダッシュボードを管理できるセルフサービス機能などの技術的機能が含まれるものもあります。また、シンプルなナビゲーションや使いやすいインターフェースであれば、技術的な知識を持たないマーケターでも、ロイヤルティプログラムに組み込まれた分析機能から大いに恩恵を受けることができます。
顧客紹介
ロイヤルティプログラムや新規顧客獲得のために強力な手段となるのが顧客による紹介です。導入方法の例としては、以下のようなものがあります。
- 顧客にユニークな紹介コードを提供し、特典を得られるようにする。
- 「1つ購入すればもう1つ無料」などの特典を用意し、自分用と友人や家族への紹介用を提供して参加を促す
- 所定の紹介数(10人、20人、50人など)を達成したメンバーが上位レベルに昇格できるルールを設定する
マインドフルネス・瞑想サービスを提供するCalmアプリでは、紹介プログラムを活用して新規ユーザーを獲得しています。

まとめ
自社に適したロイヤルティ機能の適切な組み合わせを見つけ活用することで、ブランドロイヤルティの高い顧客を惹き付けることができます。そしてそれは収益の創出、会員数の増加など、より大規模な顧客ロイヤルティ基盤を構築することへつながります。
- McDonald’s、Donatos、Bloomingdale’s、FitBit、Nikeなど、多くのブランドがこれらの機能を組み合わせてロイヤルティプログラムを展開しています。
- ゲーミフィケーションやランク制度は、すべての業界に適しているわけではありません。例えば、金融サービス(Finserv)業界では、すべての顧客を平等に扱うことを誇りとしているため、ランクやレベルを伴うゲーミフィケーションは適さない場合があります。
- 一方で、ダイナミックセグメンテーションやシングルメンバービューを活用すれば、特定のセグメントや顧客の嗜好にフォーカスすることができます。これらの機能を利用して、最適なパーソナライズ体験を提供しましょう。
ロジャー・ウィリアムズはこう述べています。「付加的収益を生み出す最も確実な方法の一つは、会員がポイントを交換した後の期間を活用することです。これを『ゴールデンモーメント』と呼び、この瞬間には特別な価値があります。」
自社ブランドにとっての「ゴールデンモーメント」を想像し、そこから逆算してプログラムを設計しましょう。
※ 本記事は2024年12月に公開された記事 “Capabilities every loyalty marketer needs from their next platform” の日本語版です。
製品&サービス紹介、デモ、事例などお気軽にお問い合わせください。