飲食、小売など、特定の接客業だけに限らずすべてのBtoC企業において、ロイヤルティマネジメントは優良顧客基盤を築き、育てていく上で重要な要素です。成功しているロイヤルティプログラムは、すべて共通したいくつかの機能を(ポイントやリワードなど)持っていますが、競合企業と差をつけるには、それに囚われず柔軟に、最高のプログラムを設計する必要があります。ここでは、基本レベルのロイヤルティプログラムから脱却して、ハイレベルのプログラムを作成する5つの方法をご紹介します。
1. ブランド価値の強化
お客様は何か理由があってブランドに引き付けられます。高級品販売業者、流行に敏感な小売業者、スポーツ/ライフスタイルブランドなど、多種多様な特徴の中からお客様は何らかの形でブランドの価値と文化を自分自身と関連付けます。ロイヤルティプログラムがそれを反映している場合、メンバー獲得とエンゲージメントにおいて高い成果を上げているはずです。
その素晴らしい例が、アクションスポーツライフスタイルブランドであり、世界最大の若者文化のマーケターの一つでもあるVansのVans Familyロイヤルティプログラムです。メンバーは限定コンテンツへのアクセスによって、発売前の商品をこっそりプレビューすることができます。また、Vans Customsプラットフォームでフットウェアやアクセサリーをカスタマイズすることも可能です。オリジナルシューズを望まないスケートボーダーがどこにいるでしょうか?
最も重要なことは、プログラムがアクティブなライフスタイル、若者文化、およびクリエイティブな自己表現を促進するというVansのミッションと一致していることです。このプログラムは、Vansのファンの個性と嗜好を認識し、リワードを与え、すでにVansブランドとの強い感情的なつながりを持つファンを驚かせ、喜ばせています。この事実から次のことが導き出されます。
2. 感情レベルでお客様とつながる
ハーバード·ビジネス·レビューによると、「感情面でつながっている顧客は、満足度の高い顧客の2倍以上の価値がある」と言われています。この感情レベルのつながりは、「帰属意識」、「なりたい自分になる」、「特別感」などの多数の要因によって促進される可能性があります。
お客様の動機を促す要因を特定し、その方法でコミュニケーションを取ることが重要です。ここで、ロマンス小説の国際的な出版社、Harlequinを例に上げましょう。同社の読者は、家族、信仰、コミュニティなどの伝統的な価値観を持ち、幸せなおとぎ話のような結末を信じている女性が中心です。HarlequinのMy Rewardsプログラムはこれらの促進要因を理解し、ロイヤルティプログラムを通じて適切な要素が確実に考慮されるようにしました。これにより、同社は読者の好みや行動に従ったカスタマージャーニーマップをデザインできます。
このプログラムでは、無料の書籍や電子書籍、サイン入りの本や発売前の新刊のコピー、お気に入りのHarlequin著者とのランチなどの懸賞への応募資格といった、読者が気になるオファーを提供しています。バレンタインデーが近づくと、読者はサイトにアクセスしてバレンタインカードのダウンロードをしたり、女友達のコミュニティで「Gal-entine’s Day (ギャレンタインデー)」を祝うなどもしています。ブランドがロマンチストで社交的な女性の読者と強い絆で結ばれるためのより良い方法とは何でしょうか。
3. 魅力的な顧客体験の創出
以前にも聞いたことがあるかもしれませんが、繰り返しておきましょう。顧客体験こそすべてです。すべてのゲスト体験が便利で、円滑に進むようにしてください。レストランやファストフードの場合、モバイルオーダーおよびモバイル決済に対応していますか (スターバックスが最良の事例です)。店内で待たずに購入できるように、顧客体験を提供できているか見直すのも有用でしょう。
店舗での日常的な体験をシームレスで迅速かつ苦痛のないものにする必要があるだけでなく、魅力的な顧客体験を創出するためのクリエイティブな案も必要です。たとえば、Old Chicago Pizzaのユニークかつ、人気のワールドビールツアーが非常に良い事例です。このプログラムでは、優良顧客は最大110種類のビールを飲むことができ、リワードを得られ、地元のレストランにあるワールドビールツアーのプレートに名前を刻んでもらえます。
4.パーソナライズさせる
今日のお客様は、ブランドからのパーソナライズされたコミュニケーションを期待しています。定期的に「お住まいの方へ」という郵便物が郵便受けに届くことを思い浮かべてください。うまくいくでしょうか? お客様は個人として扱ってもらうことを求めているのです。名前で挨拶されることはもちろん、自身の好みが事前に知られていることを期待しています。実際に、お客様の56%は、興味や個人的な関連性がないロイヤルティプログラムから離脱しています。
もちろん、個人として認識されるだけではなく、対応もパーソナライズされることを望んでいます。あなたがホテルブランドだとしましょう。あるロイヤルティメンバーの要望は人気レストランの予約かもしれませんが、別のメンバーは限定の地域イベントへの参加を喜ぶかもしれませんし、さらに他のメンバーは、毎朝お気に入りの新聞がすべて届けられることを同じくらい喜ぶかもしれません。求める対応は人によって異なります。
5. 競合と差をつける
「猿真似の」ロイヤルティプログラムは世の中に大量に出回っています。お客様にとってはみな同じです。こうしたプログラムは差別化されておらず、簡単にコピペできます。これでは、競合他社と同じようなポイント、リワード、オファーしか提供できません (どこにでもあるような誕生日や記念日のお祝いなど)。さらに悪いことに、「敗者」のプログラムは赤字を出し、お客様が普段から行う行動に対してリワードを与える傾向があり、実際に新しい行動を動機づけることはありません。ここまで紹介したプログラムはすべて、こうした猿真似のプログラムを遥かに超えたものです。貴社のロイヤルティプログラムはいかがでしょうか?