リレーションシップマーケティングを進める4つのステージ

_500x500pix

マーケターがこれまで活用してきたテクノロジーや広告手法の基盤が崩壊し、マーケティング業界は転換点を迎えています。Cookieやサードパーティデータに頼れない今、広告費から真のROIを得るためにはどうすればいいのでしょうか。業界の大きな流れは、マーケティング戦略全体を「顧客をすべての中心に据えたリレーションシップマーケティング」に変えていくことです。スターバックス、アメリカン航空、巨大小売店のSalling Groupなどがこの方向に舵を切り、持続的な利益を創出しています。この記事では、リレーションシップマーケティングの基本となる4つのステージを紹介します。

この記事は米国チーターデジタルのブログ The 4 Stages Of Relationship Marketing を日本向けに翻訳・再編集したものです。 翻訳:那波りよ

リレーションシップマーケティングの4ステージ:左から、未知の顧客、既知の顧客、パーソナライズされた顧客、ブランドにロイヤルティを持つ推奨者

ステージ1. 新規顧客の獲得

どんなビジネスであっても、関係構築の第一歩は、未認のお客さまを既知のお客さまに変えていくことです。この段階では、新しい友人と出会うときのように、相手を一人の人間として理解するための質問を投げかけ、彼らの要望やニーズを知ることが重要です。

具体的には、基本的な連絡先を尋ねるとともに、ゼロパーティデータを収集するため、お客さまとの価値交換が成立するようなアンケートを提示します。デジタル上であっても、相手のリアクションやサインを読み取ることを忘れてはいけません。これらをすべて、データベース(CRM/ EDPなど)にマッピングし、あなたのブランドと関わったお客さま一人ひとりについて、新しく記録を始めていきます。

この記録には、Web上での行動やオンラインおよび実店舗での取引記録、自社のアプリやサイト、ロイヤルティプログラムへのエンゲージメントなど、他のデータストリームを追加することもできます。この方法はオーディエンスの増加につながるだけでなく、プロファイルを充実させ、後のサイクルでオファーやメッセージをパーソナライズするために必要なデータを獲得するためにも役立ちます。

また、購入のクリックを促したり、オーディエンスを獲得したりするための毎月の広告コストを削減できます。削減したリソースの一部を新たなお客さまの獲得戦略に充て、自社のデータベースへの登録を促すことで、メール、SMS、アプリ、Webメッセージといった自社チャネルでメッセージを送ることができるようになります。ただし、接点を獲得すればどんなコミュニケーションをとっても良いということではありません。適切な関係を築いた上で対話をすることが重要です

ステージ1のまとめ

お客さまとの接点を獲得し、顧客データを継続的に充実させましょう

実践のためのアイデア

広告費を使って、未認知のお客さまに広く価値交換を提案しましょう。注力すべきは収益に直結するような広告ではありません。まずは簡単なアンケートに答えてもらい、自社のマーケティングミックスをオプトインしてもらうのです。

たとえば懸賞付きのアンケートで、Cookieやデジタル履歴からは推測できない行動や希望の金額、その他の心理学的データに関するゼロパーティデータを収集します。賞品は、たとえば自転車会社の場合ならツール・ド・フランスへの旅行にするなど、自社の商品やサービスと関連した体験がおすすめです。既存のお客さまには、よりパーソナライズしたオファーを作るのに役立つ質問に答えてもらい、10%割引や保証を付けるなど、何らかの付加価値を提供するキャンペーンを行います。そのデータを使って、自社の製品がいかにお客さまのライフスタイルに合っているかを説明し、競合他社と差別化しましょう。

【関連リンク】

▶The North FaceとVans Familyのゼロパーティデータ収集・活用の取り組み(日本語・動画)

【スペシャル セッション】データの出口戦略としての顧客ロイヤルティ | Japan Signals 2021

ステージ2. エンゲージメント

顧客接点が持てたなら、次はお客さまをマーケティングミックスに招き入れ、彼らについて学び続けながら、すべてのチャネルでエンゲージメントを開始しましょう。チャネルには、メール、SMS、Webサイト、アプリ、ウォレット、チャットボットのほか、ダイレクトメールも含まれます。データを活用し、複数のチャネルで一貫したメッセージを配信することが重要です

マーケターが最適と思うタイミングで送信する“投下型”キャンペーンのみでは十分ではありません。リアルタイムのきっかけを逃さず、最適なメッセージを最適なタイミングで配信してください。

大量のメッセージを送信する際には、知り得たお客様の情報に基づいて、ダイナミックなセグメントを作成するように努めましょう。エンゲージメント戦略では、規模も重要な要素です。なるべく大きな規模を実現するために、部門間の壁をなくして顧客データを一元的に把握し、シームレスにアクティベーションできるプラットフォームを用意しましょう。分析、理解、そしてアクティベーションを1つのプラットフォームで実行できれば、取り組みは合理化され、より多くの知見が得られるはずです。

ステージ2のまとめ

適正な情報処理機能を持つメッセージング戦略を確立しましょう

実践のためのアイデア

メールとSMSでA/Bテストを実施し、メッセージング効果を最大化しましょう。閲覧行動が、カート落ちや再獲得、その他のチャネルをまたいだジャーニーの引き金になるかどうかを判断することも求められます。マスメッセージングには高度なセグメントを使用し、その結果を追跡することで、ステージ3で利用する機械学習やその他の予測機能に活かすことができます。最後に、より多くのモバイルメッセージとデータを収集し、コミュニケーションとトランザクションに統合しましょう。

【関連リンク】

▶Pretty Litterと完璧かつ高コンバージョンなキャンペーンを展開する(英語・動画)

Creating Purrfect High-Converting Campaigns with PrettyLitter

▶クライアントサクセス: SeaWorldにおけるデータの活用による効果的なメールパーソナライゼーション(英語・動画)

Client Success: Leveraging Data for More Effective Email Personalization at SeaWorld

3. パーソナライズ

ここまでのステージでは、データベースを構築し、顧客のプロファイルを充実させ、基本的なメッセージングとコミュニケーションの方法を確立してきました。ここに次世代のパーソナライゼーション戦術を追加することで、さらに高いレベルに到達することができます。この記事では代表的なアイデアをいくつかお伝えします。

まず、お客さまがあなたのブランドの助けを必要とするその瞬間に対応できる、高度なカスタマージャーニーを提供しましょう。具体的には、きっかけとなるシグナルに耳を傾け、一つひとつの経路にそってメッセージ、コンテンツ、オファーを出し分けます。ここには、メールやSMSのトリガー送信、Webサイトやアプリにおける既存のお客さまへのパーソナライズされたコンテンツ、モバイルウォレットやロイヤルティプログラムなどに対するオファーが含まれます。コンテクストに沿った体験をリアルタイムに提供することが、成果につながります。

データを用いて高度な機械学習を行うと、オーディエンスに対して予測的・予見的な結果を出すこともできます。リアルタイムマーケティングは、取得したイベント、トリガー、バッチデータに基づいており、基礎的な意思決定エンジンの影響力をさらに増幅します。これは、チャネル全体における消費者の行動とアクティビティを理解するために役立ちます。

加えて、柔軟なルールエンジンは、マルチチャネルで一貫してオファーを定義、管理、ターゲット化することができます。機械学習、人工知能、そして膨大なデータを使用して、より良いジャーニーや最適なタイミングでのアプローチを提供し、お客さまの意思決定を促進することを目指しましょう。

ステージ3のまとめ

データを活用し、真にパーソナライズされた体験を創造しましょう

実践のためのアイデア

年に一度の誕生日メールを送る代わりに、お客さまが今月最も訪問したサイトやアプリのセクションに基づいて、おすすめ商品を提案するメールを配信しましょう。また、お客さまのアンケート回答を件名にダイナミックに反映させることで、自分の回答が採用されていると伝えることができます。これにより開封率の上昇が期待できますし、コンテンツやオファーがパーソナライズされていれば、エンゲージメント率も向上します。

また、購入後にアンケートや商品情報をSMSやメールで送ったり、サイト訪問や店舗来店アプリの起動時に感謝を伝えたりすることも有効です。これらのシグナルはすべて、広告とともにブランドへのロイヤルティと興味を高め、オウンドチャネル訪問へのトリガーとなります。

【関連リンク】

▶スターバックスのリレーションシップマーケティングを支えるパーソナライゼーション戦略(英語・動画)

The Personalization Strategy Behind Starbucks Relationship Marketing Efforts.

▶Salling Groupはどのようにしてデンマークの小売人口のうちの35%と関係を構築したのか(英語・動画)

How the Salling Group Engages 35% of Danish Retail Population

▶オムニチャネルについて理解し、パーソナライズを推進する(日本語・ブログ記事)

今さら聞けないオムニチャネルとは?わかりやすく基本と事例を解説

ステージ4. リテンション ~顧客と継続的な関係を築く~

ここまでの3つのステージを実行できれば、ロイヤルティの醸成はスムーズに進むようになりますが、これで仕事が終わったわけではありません。チーターデジタルの調査によると、世界の消費者の57%が「好みのブランドにはより多くのお金を支払う」と回答している一方、67%は「同じブランドから繰り返し購入しているものの、ロイヤルティを抱いているわけではない」とも答えています。繰り返し購入していれば一定のロイヤルティがあると思い込むのは禁物です。

ロイヤルティを醸成するためには、心理的なつながりが必要です。割引や大量のポイント付与は成功するプログラムの構成要素になり得ますが、それだけでロイヤルティが高まることはありません。時にはシンプルに、サイトへの訪問やアプリ内のコンテンツを閲覧してくれたことに対する感謝を伝えることも効果的でしょう。そのためには、やはりお客さま一人ひとりの行動を認識することが必要になります。

お客さまに行動を認識してもいいと思ってもらうためには、どんなインセンティブが有効かを考えます。購入以上の価値を提供し、同時にすべてのデータストリームを使用して、お客さまを動かしているものへの理解を深めます。お客さまの心理データを含むプロファイルを作成しているなら、その人を親友にするために必要な理解力を持つことができるはずです。これこそ、ロイヤルティが高まり、LTVが測定可能になる状態です。

ステージ4のまとめ

ロイヤルティプログラムを利用して、お客さま一人ひとりのニーズを把握し続けましょう

実践のためのアイデア

ファストフード店ならお客さまに好きなソースを選んでもらったり、他にも商品を使用した画像を投稿してもらったりするなど、購入以外のアクションでつながりを構築する機会を提供します。このようなアクションを把握して、パーソナライズされたメールやポップアップ、Webサイトコピーでは、お客さまを一人ひとりの名前で呼びかけましょう。

また、特にカスタマーサービスに関しては、アプリやデジタルプロパティを使いやすくすることが重要です。どの世代の人も簡単に操作できるブランド体験を構築しましょう。

【関連リンク】

▶現代版のロイヤルティプログラムについて学ぶ(日本語・ブログ記事)

西井敏恭さんと考えるロイヤルティプログラム刷新のポイント

まとめ

この記事では、リレーションシップマーケティング戦略を形成する基本的な構成要素を説明しました。コンセプトは非常にシンプルですが、完璧に実行するのは簡単ではなく、組織の文化を変える必要があるかもしれません。最も重要なのは「完全に消費者を中心に据えたマーケティング活動を行う」と決断することです。チーターデジタルはリレーションシップマーケティングを実行するためのテクノロジー、サービス、学習コンテンツを提供しています。ぜひご相談ください。

LEARN NEW SKILLS WITH US!!
チーターデジタルが運営するマーケター向けの学習プログラム「Marketing DX Academy」では、業界を代表するマーケターの皆さまとともに、5つの領域からなる学習プログラムを無料で提供しています。【受講無料】

(コンテンツの一例)

・Z世代のコミュニケーション インサイトを徹底解説(ウェビナー・原田曜平さん登壇)

・実務家と弁護士に学ぶ、 マーケティングデータ活用・保護の最新事情(ウェビナー・DataSign 太田 祐一さん、弁護士法人GVA法律事務所 阿久津 透さん登壇)

・7カ国 5,404名が対象!消費者トレンド調査(eBook)

・国内55社のロイヤルティプログラムを類型化して解説!ロイヤルティ プログラム完全ガイド(eBook)

Scroll to Top