MAツールを活用し、効果の高い施策をクロスチャネルで、スピーディーに展開する。そんなデジタルマーティング戦略を実現しているのが、セレクトショップの老舗として人気のSHIPSです。
同社では、2019年にMAツール「Marigold Engage +」を導入し、メール施策の運用を行ってきました。2023年からは、アプリ連携も開始し、クロスチャネル配信を実現。ユーザーの好みに応じた内容で通知を行うパーソナライズ戦略で、閲覧率の向上や売上の促進といった具体的な成果を上げています。
実際にSHIPSでは、こうした施策を、どう具現化しているのでしょう。施策を担当する同社 販売促進部 部長・萩原千春さんと、販売促進部 デジタルマーケティング課 課長 平中真澄さんに伺いました。
SHIPSについて
シップスは1975年に創業した、日本で歴史のある老舗のセレクトショップです。国内外ブランドのセレクトと、シップスオリジナル商品を揃え、トレンドとベーシックをミックスしたスタイルを提案しています。SHIPS、SHIPS anyを軸に、SHIPS Colors、quaranciel、Southwickなどのレーベルやブランドを展開。メンズ、ウィメンズ、キッズのアパレルと服飾雑貨を中心に販売しており、全国に70店舗以上を構え、SHIPS 公式オンラインショップなどの通販サイトを運営している企業です。
INDEX
- 2019年にMAツールをリプレイス導入。5年間の自社運用でノウハウを蓄積
- 公式アプリをブランド体験のハブに
- 特に通知効果が高かった施策は、意外にも…
2019年にMAツールをリプレイス導入。5年間の自社運用でノウハウを蓄積
SHIPSは、2019年にMAツールをCheetah Digital by Marigold にリプレイス。以降現在までおよそ5年、継続利用しています。
「以前、当社では別のMAツールを利用していました。しかし、自社のリソースやスキルの制約から、シナリオに基づいたメールやアプリの通知を自力で実行するのが難しく、代理店に頼らざるを得ませんでした。
その結果、シナリオが実装されるまでに多くのリードタイムが必要となり、時には半年くらいかかってしまうこともありました。また、委託費がかさみ、ROI(投資収益率)の部分でも、見合っていないと感じていたこと、社内にノウハウが溜まらないことにも課題感がありました」(萩原さん)
「Cheetah Digital by Marigold を導入したことで、HTMLの作成はもちろん、データベースにおけるテーブルの追加や突合、フィルター作成など、自分たちで操作できる部分が増えました。また、ステップメールなども自社で実装できるようになり、ポイントの有効期限を見て通知を送るといったシナリオなど、施策の本数を増やすことができています」(平中さん)
公式アプリをリニューアル。ブランド体験のハブに
同社は2022年に公式アプリをリニューアル。パーソナライズされたコミュニケーション、スマートなEC体験、そしてリッチな店舗体験をつなぐ『ハブ』となっています。
「当初アプリはカードタイプの会員証の代替としてスタートしたこともあり、EC体験やコミュニケーション機能が不足していました。お客さまのニーズや生活ライフスタイルが大きく変化する中で、コミュニケーションの設計や、ロイヤルティプログラムも、アップデートする必要が出てきていたんです。
アプリ上でのコミュニケーションも、対象となるお客さまを手動で絞り込み、バルクでの通知をかける形で対応しており、運用スピードとリソースの部分で限界を感じていました」(萩原さん)
公式アプリのリニューアルにあたっては、アプリをノーコードで開発・運用できるクラウド型のアプリ開発プラットフォーム・Yappliを新たに導入。23年12月には Cheetah Digital by Marigold と連携し、クロスチャネル配信を開始しました。
「もともとCheetah Digital by Marigold の選定ポイントとなったのが、MAツールとしての機能の高さに加え、チーターデジタルの支援体制がしっかりしている点です。伴走支援をいただきながら、メール配信とアプリプッシュ施策を一元管理する体制を、当社としてもスムーズに構築できるのではないかと考えました」(萩原さん)
――――実際のアプリ施策リリースまでは、どのように進めたのでしょう。
「まずは優先的に実装したいものをチーターデジタル側に伝え、要件定義の作成から参画していただいた上で、進行のコントロールもしていただきました。スケジューリングの精度が高く、それをベースに遅れないよう社内で動き、課題が出たらその都度相談するという流れで進めました。
やはり最初の構築の部分が一番大変なのですが、チーターデジタルは技術サポートや進行管理のスキルが非常に高く、おかげで特に難渋することもなく導入から1ヵ月ほどで優先施策をリリースできました。
メール施策をアプリへ移行するにあたり、同じツールで管理していなければ一から作り直さなくてはなりません。それがCheetah Digital by Marigold で完結できているのでスムーズな構築ができ、運用工数も大幅に削減できています」(萩原さん)
特に通知効果が高かった施策は、意外にも…
では、同社では具体的に、どんなアプリ施策を実行したのでしょう。平中さんは、こう振り返ります。
「まずは、メールですでに行っているシナリオ配信から、『購入後フォロー』、『ポイントリマインド』、『カート放棄』、『お気に入り商品の値下げ/再入荷』といった重要な施策をアプリにもシフトし、条件に適合するお客さまへのプッシュ配信を開始しました。
その後の第二フェーズでは、お客さまのお気に入り情報に基づいたシナリオ施策や、『誕生日キャンペーン』『離反顧客フォロー』などのシナリオ配信も開始。こうしてお客さまごとにパーソナライズされた通知を行うことで、SHIPSとの接点を商品軸以外のところにも広げながら、より充実したコミュニケーション体験を提供することを目指しました」(平中さん )
「とりわけ効果が高かったのが、お客さまのお気に入りのスタッフが、新たにスタイリングを公開した際に通知を行うシナリオでした。
配信の閲覧率も、そこからのクリック率や購買転換率も、非常に高いものとなりました(後述)。
他にも、お気に入りの商品が再入荷されたタイミングで通知を行うシナリオや、お気に入りの店舗のイベント情報を通知するシナリオなどでも、高い効果が見られました」(平中さん)
「アプリは通知したコンテンツを閲覧していただける可能性が平均的に高く、売上にもつながりやすいと感じています。また、アプリは実店舗で起動されることが多いこともあってか、ECのみならず実店舗での売上にも直結しやすいです。
たとえば前述のお気に入りスタッフのスタイリングをアプリで通知するシナリオでは、50%くらいの方が閲覧し、クリック率も10%近くにのぼります。そして購買転換率に関しても、サイト平均より高いCVRが確認できております」(平中さん)
一方で、アプリ配信ならではの難しさとやりがいもあると話します。
「たとえば表示できる画像や文字数の制約など、メール配信とアプリプッシュではできることが異なるので、お客さまのUXをどうイメージするかが難しいです。シンプルだからこそ、よく考えないと逆にUXが下がってしまいかねません。
当社は小売ですし、洋服屋としてお客さまのことをイメージする素養が多くのメンバーに備わっており、それを活かしながら議論を重ね、できる限りベターな選択をできるよう努めています」(萩原さん)。
――――こうした成果を受け、SHIPSではCheetah Digital by Marigold をどう評価しているのでしょう?
「現状、ROIはしっかり見合っていると感じています。今後シナリオをしっかり整備して活用することで、ROIはもっと高まっていくでしょう」(萩原さん)。
「現在当社では、デジタルマーティングの基幹となるデータを、すべてCheetah Digital by Marigold に連携しています。アプリからもお客さまの行動やお気に入りのデータをつかめるようになったことで、今後はより効果的にデータを活用できます。
CDP(Customer Data Platform)など大規模データの“箱”を用意していない会社でも、こうしてMAツール側にデータを集約・活用できる点は、Cheetah Digital by Marigold という製品の大きな魅力です」(平中さん)
最後に、今後のマーケティング施策の展望について、萩原さんはこう話しました。
「将来的には一つのシナリオに対して配信チャネルを固定せず、お客様それぞれの行動データに基づいて配信チャネルを柔軟に出し分けるなど、1to1のコミュニケーションにできるかぎり近づけていきたいです。ぜひCheetah Digital by Marigold を通し、本当のパーソナライズを追求したいですね」(萩原さん)。
※ 本事例は2024年4月時点の情報です