カスタマーリテンション(顧客維持)を上げるマーケティング施策10選

カスタマーリテンション(顧客維持)を上げるマーケティング施策10選_500x500pix

「リテンション施策をやる必要があるけれど、具体的に何をすれば良いだろう」

そんな風にお悩みかもしれません。

リテンション施策を成功させるために大切なのは、課題の把握と適切な手法の選択です。

しかしながら実際には、課題の把握も手法の選択も間違っているマーケターが多いといわざるを得ません。せっかく労力をかけて施策を実行しても、成果が出ずに終わってしまいます。

そこで本記事では、リテンション施策が下がったときに考えられる課題を明示したうえで、それぞれの課題に効果的な施策を10個、ご紹介します。

 本記事のポイント
● リテンション施策の「どこ」から手を付ければ良いのかわかる
 ● 具体的に実践すべき施策を解説
 ● 顧客と良い関係を築きリテンションを高める考え方が身につく

「リテンション施策は何をすれば良いのか教えてほしい」

「自社のリテンションを高めたい」

…という方におすすめの内容となっています。

この解説を最後までお読みいただければ、いま打つべき手が見えてきて、すぐに行動できるはずです。適切なリテンション施策は、大きな成果をもたらします。では、さっそく解説を始めましょう。

1. リテンションが下がったら最初にすべき3つのこと

「カスタマーリテンションが下がってきた」

と気付いたとき、慌ててやみくもに施策を乱発するのは良策とはいえません。

顧客から見ると、

「最近、このブランドは迷走しているな」

と感じられ、ますます顧客離れが進んでしまうからです。

まずは地に足を付けて、次の3つのことを行いましょう。

  • リテンションが下がった原因の分析
  • リテンション施策全体のゴールと予算の設定
  • 最適な施策の選択と優先順位づけ

以下で詳しく解説します。

1-1. リテンションが下がった原因の分析

1つめは「リテンションが下がった原因の分析」です。

リテンションが下がる原因は、もともとのブランドや商品自体が問題を抱えている場合もあれば、直近で起きた何らかの変化が影響している場合もあります。

▼ リテンションが低下する原因の例

  • 提供している商品の機能上の問題で満足度が低い
  • 顧客とのコミュニケーション不足でリピーターが少ない
  • ロイヤルカスタマー化する前に競合ブランドにスイッチしている

具体的な分析の進め方としては、顧客満足度調査を実施すると有益なヒントを得やすいはずです。

▼ 顧客満足度調査の方法

  • 顧客から直接ヒアリングする(営業担当者・お客様相談窓口など)
  • インターネット・電話・ハガキなどでアンケートを実施する
  • ユーザーインタビューを実施する

詳しくは「顧客満足度の調査方法はどうやる?指標やアンケートの作り方を解説」にて解説していますので、参考にしてみてください。

1-2. リテンション施策全体の目的・ゴールと予算の設定

2つめは「リテンション施策全体のゴールと予算の設定」です。

原因が見えてくると、見切り発車で手当たり次第に施策を打ちたくなります。そこをこらえて、まずは全体の骨子から設定しましょう。

リテンション施策全体を通して何を目的として、どんな指標をクリアするのかを明確にしておきます。

▼ 目的・ゴールの設定例

  • 目的:ロイヤルカスタマーを増やしリテンションを高める
  • ゴール:顧客維持率 前年比150%改善

目的・ゴール(獲得する成果)が明確になると、“どれだけの費用を投資できるか”についても明確になるはずです。

必要な予算を確保して、施策実行に備えましょう。

1-3. 最適な施策の選択と優先順位づけ

3つめは「最適な施策の選択と優先順位づけ」です。

リテンション低下の原因がわかり、目指す成果と使える予算が明らかになったら、費用対効果が最大になるように最適な施策を取捨選択し、どこから実行していくか優先順位を決定します。

次章からは、具体的な施策を以下の3つのカテゴリに分けて紹介していきます。

  • (1)商品・サービスの満足度が低い場合のリテンション施策
  • (2)継続リピーターが少ない場合のリテンション施策
  • (3)ロイヤルカスタマーが少ない場合のリテンション施策

自社にとって優先順位が高そうな施策から読み進めてください。

2. リテンション施策(1)商品・サービスの満足度が低い場合

まずリテンション低下の原因として「商品・サービスの満足度が低い」ことが考えられるときの施策を3つ、ご紹介します。

  • 使用前の期待値を適切にコントロールする
  • 満足度が高くなる使い方で使ってもらう
  • 商品・サービス自体を改善する

2-1. 使用前の期待値を適切にコントロールする

1つめの施策は「使用前の期待値を適切にコントロールする」です。

「商品の満足度が低い」となると、ほとんどの人が「商品を改良しなければ!」と発想します。

これは問題です。なぜなら、満足度とは顧客の知覚であるというマーケティング的観点が抜け落ちているからです。

商品の改良はもちろん大事なことですが、その前に必要なチェックとして、

「商品そのものが提供できる価値以上に、顧客を期待させてしまうコミュニケーションをしていないか?」

と、コミュニケーションを疑ってください。

▼ 期待値のコントロールが不適切な例

  • Web広告での過剰な煽り表現
  • 流行に合わせて本来の強みとは別の機能をフューチャー

期待していたよりも実体が良かったときに満足度は高くなり、期待していたよりも実体が悪かったときに満足度は低くなります。

満足度を高めるためには、商品を使用する前にハードルを上げすぎないことが大切です。商品使用前のコミュニケーションを見直しましょう。

2-2. 満足度が高くなる使い方で使ってもらう

2つめの施策は「満足度が高くなる使い方で使ってもらう」です。

商品・サービスの満足度は、顧客の使い方次第で大きく上下することを知っておきましょう。

まず基本として、間違った使い方をしないよう、的確にガイドしなければなりません。

購入時に伝える言葉、商品・サービスに同梱されている取り扱い説明書、メールマガジンやWebサイト上での案内、YouTube動画を使ったレクチャーなど、「ブランドが意図するとおりの使い方を顧客にしてもらう工夫」を、もっともっとするべきです。

さらに、「商品が持つ強みを強く知覚してもらうための仕掛け」「小さな効果も見逃さずに実感してもらう工夫」も重要です。

例えば「普通のプロテインよりも泡立ちが少ないプロテイン」という商品があったとしましょう。

ブランドとしては「実際に飲んでもらえれば良さに気付いてもらえる」というスタンスはNGで、「泡立ちが少ない」というポイントを強く意識しながら飲んでもらえるように導く必要があります。

▼ 強みを知覚してもらう施策例

  • 商品購入時のサンクスメールで、泡立ちの少なさにこだわった開発ストーリーを伝える
  • パッケージや同梱ツールに「泡立ちの少なさを比べてください!」と記載する

あるいは、「美肌を作るプロテイン」という商品ならば、わずかな肌の変化も見逃さずに「効果がある」と感じてもらえるように導きます。

▼ 小さな効果でも実感してもらう施策例

  • 「翌朝のお肌チェックシート」を同梱して肌状態をチェックしてもらう
  • 1週間後に肌の細かな変化に気付いてもらうことを目的としたアンケートを送信する

このように、満足度とはある程度、ブランドのコミュニケーションによって意図的に醸成していくことが大切です。

2-3. 商品・サービス自体を改良する

3つめの施策は「商品・サービス自体を改良する」です。

先に紹介した事前の期待値コントロールや満足度の高くなる使い方などの施策を手抜きなく実行しているにもかかわらず、商品・サービスの満足度が低いのであれば、それは商品・サービス自体に問題があります。改良しましょう。

繰り返しになりますが、大切なのは「商品満足度が低い→商品を改良する」と短絡的に考えないことです。

“商品自体”以外にも、さまざまな要素が満足度に絡んでいることを理解したうえで、改良に取り組むことです。

改良に取り組む際には、「1-1. リテンションが下がった原因の分析」で実施した顧客満足度調査の結果を踏まえて進めることで、顧客視点での改良ができるでしょう。

3. リテンション施策(2)継続リピーターが少ない場合

次にご紹介するのは、継続リピーターが少ないときに取り組みたいリテンション施策です。

「商品・サービスは一定の満足度を獲得しているものの、なぜかリピート率が悪い」

というときに効きやすい施策といえます。

クロスセルで顧客の生活習慣にブランドを定着させる
オムニチャネルで顧客と絶えず接触し続ける
ロイヤルティプログラムで継続するメリットを創出する

3-1. クロスセルで顧客の生活習慣にブランドを定着させる

1つめの施策は「クロスセルで顧客の生活習慣にブランドを定着させる」です。

リピート率が悪いシンプルな原因は「顧客があなたのブランドのことを忘れてしまうから」です。

顧客の忙しい日常生活のなかで、ひとつのブランドのことなど些末なものでしかありません。

そこで有効なのがクロスセル(別の商品の購入も勧める)によって、顧客の生活習慣のなかへブランドをより多く浸透させていく施策です。

例として、単品通販(1種類の商品のみ取り扱う)で成功したブランドが、徐々に商品数や扱うカテゴリを増やして横展開していくことがあります。これも顧客の生活にブランドを浸透させていく施策の一環といえます。

例えば「食器用洗剤だけ」しか買っていないブランドのことはすぐに忘れてしまいますが、洗濯洗剤、ボディソープ、シャンプー……と生活習慣のなかに入り込んでいけばリピート傾向が高まるのです。

3-2. オムニチャネルで顧客と絶えず接触し続ける

2つめの施策は「オムニチャネルで顧客と絶えず接触し続ける」です。

オムニチャネルとは直訳すれば「あらゆるチャネル」という意味で、実店舗・Webサイト・メール・スマホアプリ・SNS…などあらゆる接点を通してシームレスに顧客にアプローチする概念です。

先述のクロスセルとは異なるアプローチですが、顧客の行動上に常にブランドが存在する状態を作ることで、ブランドが記憶され愛着や信頼の醸成へとつながっていきます。

例えば、「Instagramで顧客とつながり、毎日発信を続けること」は、絶えず顧客と接触できる施策です。

“顧客から見える世界”のなかに、常にあなたのブランドを存在させましょう。

オムニチャネルについては「オムニチャネルとは」もあわせてご覧ください。

3-3. ロイヤルティプログラムで継続するメリットを創出する

3つめの施策は「ロイヤルティプログラムで継続するメリットを創出する」です。

ロイヤルティプログラムとは、インセンティブ(特典)の付与や特別な顧客体験の提供を通して顧客の愛着や信頼の気持ちを育てる施策です。

具体的なロイヤルティプログラムの内容はブランドごとに異なりますが、例えば以下が挙げられます。

▼ ロイヤルティプログラムの具体例

  • 会員ランクごとに異なる特典が受けられる会員制度
  • 購入金額に応じて付与されるポイント制度
  • 新商品の優先先行販売
  • 会員限定イベントへの招待
  • 誕生日プレゼントの贈呈

顧客にとっては、競合他社にスイッチ(乗り換え)せずに購入し続けるモチベーションになり、リテンション施策として効果的です。

ロイヤルティプログラムについて詳しくは以下の記事をご覧ください。

4. リテンション施策(3)ロイヤルカスタマーが少ない場合

最後に、ロイヤルカスタマーが少ない場合に実践したいリテンション施策をご紹介します。

「3〜4回のリピート回数は確保できても、10回・20回…と買い続けてくれる顧客は増えない」

「何年も継続して愛用してくれる顧客をもっと増やしたい」

というケースが該当します。

感動的な顧客体験を提供する
顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションを展開する
独自の世界観を貫き共感する顧客と仲間になる
ロイヤルカスタマー化する顧客を逆算して獲得する

4-1. 感動的な顧客体験を提供する

1つめの施策は「感動的な顧客体験を提供する」です。

ブランドを変わらず支持し続けてくれる強いロイヤルティ(愛着や信頼)を持つ顧客が増えないのは、それだけのインパクトある体験をしていないからです。

マーケティングに限定せず人間の心理として、私たちが何か(誰か)を大好きになって「一生ついていく!」と心に決めるときには、相応の感情を揺さぶる体験が不可欠です。

「商品に満足する、不満がない」というレベルでは到底足りません。

具体的に何をすべきかは“ブランドの真髄”に直結するポイントなので、浅はかな答えはありませんが、ヒントとして以下を満たす体験を考えてみてください。

▼ 感動的な顧客体験のヒント

  • 異常にものすごく「お得」と感じる体験
  • 異常にものすごく「親切にしてもらえた」と感じる体験
  • 異常にものすごく「私のことをわかってもらえた」と感じる体験

例えば、

“いつも試験勉強に通っていたスターバックスに試験当日の朝に寄ってテイクアウトしたら、カップに「今日は試験がんばってください」と書いてあった”

という体験は、親切さとわかってもらえた感があり、強い感動を呼び起こします。

あなたのブランドの顧客に、どうしたら泣けるほどの感動を届けられるでしょうか。前述のとおり“ブランドの真髄”に直結するポイントです。ぜひ深く検討しましょう。

4-2. 顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションを展開する

2つめの施策は「顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションを展開する」です。

パーソナライズマーケティングという手法がありますが、顧客を集合体としてかたまりで見るのではなく、一人ひとりの“人”として見つめ、その人に合ったコミュケーションを行うことが、ロイヤルティの醸成に役立ちます。

パーソナライズマーケティングの具体的な施策としては、次の6つが挙げられます。

▼ パーソナライズマーケティングの施策例

  • パーソナライズド広告
  • メールマーケティングのパーソナライズ化
  • ECサイトにおける商品のレコメンド表示
  • SNSにおけるパーソナライズ表示
  • コンテンツのレコメンド表示
  • 個人の嗜好や背景に合った商品の提供

詳しくは「パーソナライズドマーケティングとは?6つの施策例と2つの注意点 」にて解説していますので、参考に実践してみてください。

4-3. 独自の世界観を貫き共感する顧客と仲間になる

3つめの施策は「独自の世界観を貫き共感する顧客と仲間になる」です。

近年の傾向として、顧客を“お客様”として丁重に扱うよりも、ブランドの世界観を共有する共犯関係を結び、仲間として感情レベルで強固な関係を築くブランドが成功を収めています。

例えば、ロボットとの共体験(collective experience)がロボットと人間の親密性を向上させるという研究もあり、顧客心理に大きな影響を与えることは想像に難くありません。

共感によるつながりづくりは、D2Cブランドが得意とするところです。

D2Cとは、メーカーが小売を通さずに、ECサイトなどを通して直接顧客とつながり、製品やサービスをダイレクトに販売するビジネスモデルを指します。

D2Cブランドの有力な参考事例を「d2c 事例」にて紹介しています。あわせてご覧ください。

4-4. ロイヤルカスタマー化する顧客を逆算して獲得する

4つめの施策は「ロイヤルカスタマー化する顧客を逆算して獲得する」です。

そもそも論として、リテンションが高まる属性の顧客を獲得できていなければ、ブランドのリテンションは高まりません。

そこで取り組みたい施策が、新規顧客へリーチする時点からロイヤルカスタマー化しやすい顧客に焦点を絞るアプローチです。

逆引きするうえでカギを握るのは、消費者が自分の意志で提供する「ゼロパーティ データ」と呼ばれるデータです。

今後はCookie規制によって、Cookieによって得られたユーザーデータ(第三者機関や他社が収集したデータ)の利用が難しくなっていくため、Cookieに依存しないゼロパーティ データを活用できるブランドが生き残るといえます。

ゼロパーティ データについて詳しくは「“ポストCookie時代”に顧客関係を強化する、ゼロパーティデータとは?」をご覧ください。具体的にどのように施策を進めるべきか、データ活用ガイドを提供しています。

5. まとめ

リテンションが下がったら最初にすべき3つのことはこちらです。

・リテンションが下がった原因の分析
・リテンション施策全体の目的・ゴールと予算の設定
・最適な施策の選択と優先順位づけ

具体的な10の施策をご紹介しました。

・使用前の期待値を適切にコントロールする
・満足度が高くなる使い方で使ってもらう
・商品・サービス自体を改良する
・クロスセルで顧客の生活習慣にブランドを定着させる
・オムニチャネルで顧客と絶えず接触し続ける
・ロイヤルティプログラムで継続するメリットを創出する
・感動的な顧客体験を提供する
・顧客一人ひとりに合わせたコミュニケーションを展開する
・独自の世界観を貫き共感する顧客と仲間になる
・ロイヤルカスタマー化する顧客を逆算して獲得する

さっそく自社にとって優先順位の高い施策から取り組みを進めましょう。リテンションを高めてロイヤルカスタマーを増やすことは、ブランドの明るい未来につながります。

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