脱クッキー時代において、二つの似て非なる課題が存在します。
一つは、個人情報保護法の流れを受け、サード・パーティ・クッキーデータの広告利用が難しくなることで、リターゲティング広告にクッキーを使用できなくなる市場課題です。プラットフォーマーや広告配信・運用サービスを提供している企業は、クッキーに代わる、個人を特定して広告を配信する識別子や、新たな広告メニューの開発に取り組んでいます。
二つ目は、これまでのリターゲティング広告に見るように、消費者の足跡をたどって、Webサイトやデバイスを横断して好みや興味を推察した広告を掲載するという、消費者体験における課題です。チーターデジタルの調査において、「デバイスをまたいだ追跡広告」に対し、 34%が受け入れる、66%が受け入れないと回答しています。一方で、「過去に購入した情報を基にしたレコメンデーションや、自分の明確な行動に対するフォローアップを基にした広告」は、73%が受け入れる、27%が受け入れないと回答。さらに、50%以上の消費者が、より良いサービスのために自身の情報を積極的に提供すると答えています。
5,000名の消費者調査データ
2021年チーターデジタル調べ
つまり消費者は企業との価値交換を求めており、クッキーが別の手段に代わった、追跡型の広告体験を求めているわけではありません。
それでは製品やサービスを提供する広告主には、どのような選択肢が考えられるでしょう。
広告配信において、広告主は新たに提供されるグーグルの広告メニューの検討や、リターゲティング広告効果の再評価を行うことが重要になります。 (詳しいことは複数のメディアで取り上げられていますので、そちらに役割をお任せします) また、サードパーティ データを活用することは広告主にとってもリスクを伴いますので、今後注意が必要になります。
参考 – リタゲ偏重から脱却した、最先端の広告予算最適化戦略とは?ヤフーの分析チームによる検証結果を公開
脱クッキー時代における重要なポイントは、消費者の価値観シフトに対応する手段です。チーターデジタルでは、ゼロパーティ データの活用を通じて消費者を理解し、フロー型のビジネスモデル (新規顧客流入とコンバージョン偏重) から、ストック型のビジネスモデル (顧客との関係を深め、ロイヤル顧客化を推進する) への移行を推奨しています。
脱クッキー時代の市場動向は、以下のチャートにまとめていますので、参照してください。ゼロパーティ データの活用方法や事例、顧客ロイヤルティを軸にしたストック型のビジネスモデルの構築はまた別のブログでご紹介します。
脱クッキー時代の市場動向 まとめ
カテゴリ |
動向 |
個人情報保護法 |
GDPR (General Data Protection Regulation: 一般データ保護規則)が2018年5月25日に施行。EU外にも効力を持つ = 企業が同意なくクッキーを付与することを禁止する規則 CCPA (California Consumer Privacy Act: カリフォルニア州消費者プライバシー法) が米国カリフォルニア州で2020年1月から適用開始。米国以外でも影響がある |
プラットフォーマーの動き |
米グーグルがWebブラウザー「Chrome」でサード・パーティー・クッキーの利用を廃止 (段階的に) 代替技術としてをFLoC (フェデレーテッド・ラーニング・オブ・コホート: Web上の行動からユーザーをグルーピングしてIDを付与する仕組みで特定グループを形成) を検証中 |
米アップルは2020年3月にWebブラウザー「Safari」で、サード・パーティー・クッキーの受け入れをシャットアウト アップルの端末を識別するIDFAのルールを承認制に変更 アプリは常に情報収集のオプトインを求められる |
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広告配信ベンダーの動き |
サード・パーティー・クッキーを利用した、第3者メディアを横断したリターゲティング広告の配信が困難に 3つの方向で対策を検討
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企業による問題 |
リクルートキャリア – 登録者の同意を得ずに、内定辞退率データを採用広告企業へ提供 参考 |
広告主の動き |
脱クッキー – フロー型ビジネスを支えるリタゲ広告でWeb訪問者 (新規 / 既存) を追うのではなく、顧客リストを構築し、関係性を温めらるストック型のビジネスを重視 例) ディノス・セシール サード・パーティー・クッキーを利用したリタゲ広告は第3者機関より顧客情報を購入していることにつながるため、危険が潜んでいることが認識され始めた 顧客ロイヤルティをビジネスの中心に位置付けて、顧客との関係性構築を重視する方向に |
消費者の動きや価値観の変化 |
企業との価値交換が消費者コミュニケーションの重要な要素へ 調査より、知らない間に収集されたデータによる広告は受け入れられない事実が世界中で表層化 例) デバイスをまたいで追いかけてくる広告 – 受け入れる 34% / 受け入れない66% 一方、過去に購入した情報を基にしたレコメンデーションや、自分の明確な行動に対するフォローアップを基にした広告は受け入れられると消費者は回答 例) 購入履歴を基にした広告 – 受け入れる 73% / 受け入れない 27% また、50%以上の消費者が、より良いサービスのために自身の情報を積極的に提供すると回答 |