パーソナライズドマーケティングとは、一人ひとりの属性や嗜好、購買や行動の履歴などにあわせて、最適な情報やサービスを提供する仕組みづくりのことを指します。
顧客のニーズが多様化している現代においては、従来の「大衆へ向けた施策(マス・マーケティング)」だけでは十分な効果を得ることはできなくなっており、多くの企業がパーソナライズドマーケティングをとり入れています。
しかしパーソナライズドマーケティングにもいくつか種類があるため、理解が不十分なままにしておくと、自社サービスにとって最適な導入方法を正しく選択することができず、うまく売上やロイヤルティ向上につなげられなくなってしまうことでしょう。
そこでこの記事では、パーソナライズドマーケティングに関する理解を深めていただくため、以下についてわかりやすくお伝えしていきます。
- パーソナライズドマーケティングの代表的な6つの施策例
- パーソナライズドマーケティングが重要な5つの理由
さらに「実際に自分の仕事でパーソナライズドマーケティングを最大限に活用したい」と考えている人のために、以下についても紹介します。
- BtoB・BtoCにおけるパーソナライズドマーケティングの違い
- パーソナライズドマーケティングを実行する際の注意点
- パーソナライズドマーケティングの具体的な活用方法
- パーソナライズドマーケティングを今すぐとり入れるためにおすすめの方法
この記事を最後までお読みいただくと、パーソナライズドマーケティングの概要や重要性をしっかりと理解することができるだけでなく、実際に自分の仕事にどのように活かせばいいのかわかり、すぐに実行に移すことができますよ。
パーソナライズドマーケティングを上手にとりいれることで、ビジネスを成功に導いていきましょう。
1.パーソナライズドマーケティングとは
冒頭でもお伝えした通り、パーソナライズドマーケティングとは「大衆(マス)に向けて画一的な情報やサービスを提供する」ことではなく、「一人ひとりの属性や嗜好、購買や行動の履歴などにあわせて、最適な情報やサービスを提供する」マーケティング手法のことを指します。
1-1.パーソナライズとは
パーソナライズとはそもそも「個人に応じる・個人向けにする」という意味を持つ単語です。
一般的にはマーケティング用語として使用されることが多く、その場合は「個人に応じた情報やサービスを提供するマーケティング手法」のことを意味するようになります。
例えばアパレルの通販サイトで、ユーザーの年齢や性別、職業、家族構成などの情報を事前に取得している場合、以下のようにおすすめ商品を出し分けることができます。
- 20代・男性・学生
- → 若年層に流行のデザインを取り入れたジーンズをおすすめする
- 30代・女性・会社員
- → 仕事中にも着ることができるフォーマルなカットソーをおすすめする
- 40代・女性・育児中の主婦
- → 親子がお揃いで着用できるTシャツをおすすめする
上記のようにサイト側でその人の趣味やニーズに合いそうな商品をおすすめできると、ユーザーは自分の欲しいものを自分で探す手間を削減することができます。
それだけでなく企業側にとっても、ユーザーの満足度が上がるとロイヤルティ向上や購入点数の増加につながるため、大きなメリットになります。こうした点から、近年パーソナライズドマーケティングの重要性が注目されるようになってきました。
1-2.カスタマイズとの違い
パーソナライズと混同しやすい単語に「カスタマイズ」があります。この2つの単語の違いは以下の通りです。
- パーソナライズ:企業がユーザーへ提供するものをひとりひとりに合ったものにすること
- カスタマイズ:ユーザーが自分の好みに合うよう自分自身で変更・追加すること
最も大きな違いは「誰が」ユーザーのニーズに合った内容にするか、という点です。
「パーソナライズ」では「企業」がユーザーに対して、属性や性別等に応じて適切な情報やサービスを提供します。一方「カスタマイズ」では、企業から提供されるものは同じで、「ユーザー」がそれに対して自分の意思で何らかの変更を加えます。例えば以下のような例があります。
- スターバックスコーヒーでドリンクをオーダーするとき
ドリンクに対してシロップを追加したり、ミルクを豆乳に変更したりするカスタマイズを行うことで、自分好みの1杯を作ることができる - 新しい自動車を購入するとき
内装の色や設備を好きなものに変更することができる
そのため、ユーザーが自らの好みを理解していたり、どのような状態を目指したいのか、というゴールをはっきりと認識している場合は「カスタマイズできること」は商品やサービスの魅力につながります。
しかし、ユーザーが自身のニーズを認知していない場合や、本人も気づいていないような顕在ニーズを掘り起こしたい場合には、カスタマイズできるようにしてもユーザーの満足度は向上しません。
そんなときに役立つのがパーソナライズです。パーソナライズではユーザーの属性や好み等に合わせて企業側で自動的におすすめを提案するため、ユーザーは何も作業をすることなく自分が実は心の中で欲しいと思っていた情報やサービスを入手することができるのです。
2.パーソナライズドマーケティングの6つの施策例
パーソナライズドマーケティングの大まかな意味についてはご理解頂けたと思いますので、次は具体的な施策例を紹介していきます。最前線の現場で実際にどのように使われているのかを知ることで、自身の仕事に活かすためのヒントを得ることができます。
それでは早速、6つの施策例を通してパーソナライズドマーケティングへの理解を深めていきましょう。
2-1.パーソナライズド広告
最も身近な例のひとつが「パーソナライズド広告」です。
- パーソナライズド広告とは
過去に検索したキーワードや、WEB上で閲覧したコンテンツの内容、検索履歴などをもとに、ひとりひとりに合った広告を表示すること
例えば新しいスニーカーが欲しくて情報収集のために検索をしたところ、その後他のWEBページに移動したのに以下のような広告欄にずっと靴の広告が表示され続けた、というような経験はありませんか?
これはYahooやGoogle等で導入されている広告の配信方法のひとつで、過去の検索履歴や位置情報、SNSの情報などをもとに、ひとりひとりに最適化された広告が表示されるという仕組みになっています。
この仕組みには、ユーザー側と広告配信側どちらにとっても以下のようなメリットがあります。
- ユーザー側 自分にとって興味のない広告を見せられるよりも、関心のある内容の広告が表示されたほうが役立つ情報を得られる
- 広告配信側 自社の商品やサービスへの関心度が高いユーザーに広告を見てもらうことができるため、クリック率や購入率が上がる
このようにパーソナライズド広告は、誰にでも同じ広告を流すテレビコマーシャルなどと違って、その商品やサービスへの関心度が高い人に対して表示させることができるため、ユーザーにとっても広告配信側にとっても有益なツールなのです。
2-2.メールマーケティングのパーソナライズ化
メールマーケティングにおいてもパーソナライズの手法は重要となっています。
- メールマーケティングのパーソナライズ化とは
顧客の属性や居住地域、購入履歴などのデータをもとに、送るメールの内容やタイミングを変えること
一昔前までは、自社の顧客に対して全員に同じ内容のメールマガジンを送ることが普通だったと思いますが、近年ではメールマーケティング用ツールの進化もあり、上記のように顧客の属性や状態等に応じて送信する内容やタイミングを変えるという手法をとることができるようになっています。
利用例としては以下のようなものが挙げられます。
- 自社サービスの利用回数に応じて送るメールの内容を変えて、関係を構築していく
- 過去購入品の傾向に合わせておすすめ商品を変える
- 宛名に顧客それぞれの名前を入れる
- 年齢や性別に応じて関心度の高い話題のメールマガジンを送る
例えば、利用期限が3年間のウイルス対策ソフトを購入したばかりの人に対して、延長の案内メールを送っても響かないかもしれませんが、あと2週間で利用期限が切れてしまう人であれば、延長手続きを検討してくれる可能性が高いでしょう。
メールを送る目的は「自社商品の販売」や「顧客との関係構築」などいくつかあると思いますが、いずれにしても「これは自分向けの情報だ」「自分にとって重要な内容だ」と認識してもらうことが大切です。
そのために有効な手法が、顧客の属性や状態に応じて、メールの内容や送信タイミングを変える「メールマーケティングのパーソナライズ化」という方法なのです。
2-3.ECサイトにおける商品のレコメンド表示
ショッピングのECサイトやスマホアプリ等で利用されている「商品のレコメンド」機能にも、パーソナライズの手法が使われています。
- 商品のレコメンド表示とは
ユーザーの登録情報や購入履歴、似たような属性のユーザーの閲覧履歴などをもとに、そのユーザーに対して最適な商品をおすすめするために表示すること
Amazonや楽天市場などのショッピングサイトで以下のような文言を見かけた経験がある人もいると思いますが、これがレコメンド表示です。
- お客様が閲覧した商品に関連する商品
- お客様の買い物に基づくおすすめ商品
- あなたの購入傾向からみたおすすめ商品
- この商品を見ている人はこちらもチェック
- この商品を見ている人におすすめ
例えばユーザーが浄水ポットを閲覧すると、以下のように他の浄水ポットが複数表示されたり、使用する際に必要となるカートリッジが関連商品として表示されたりします。
このように、ユーザーが必要とするであろう情報をショッピングサイト側が自動で表示することによって、ユーザーは自分が興味を持った商品を類似品とすぐに比較して最適なものを選ぶことができたり、関連商品の買いを防止することができるというメリットを享受することができます。
販売側としても、ユーザーの必要な商品を適切に表示できれば「膨大な商品の中から自分の欲しいものをすぐに見つけられなかった…」とユーザーがサイトから離脱してしまうのを防止することができます。
さらに、ユーザーが当初欲しいと認識していなかったけれども実は必要なものや、見たら欲しくなるような商品をうまくレコメンドできると、購入点数が増えるため売り上げの増加に直結します。
こういった利点があるため、パーソナライズされたレコメンド方法は多くのECサイトで導入されているのです。
2-4.SNSにおけるパーソナライズ表示
FacebookやinstagramなどのSNSでも、数ある投稿の中からそのユーザーに適した内容を表示するためにパーソナライズ機能が活用されています。
- SNSにおけるパーソナライズ表示とは
ユーザーが過去に他の人の投稿に対して行った反応(「いいね!」やコメントなど)や、投稿をシェアしたユーザーとの関係性などのデータをもとに、ユーザーが関心を持ちそうな投稿を優先的に表示すること
例えばFacebookにログインすると、自分のつながっているユーザーやグループなどの投稿が以下のようにフィード画面に表示されます。
ただしこれは投稿の時系列順ではなく、ユーザーのアクションや位置情報などのデータをもとに表示の優先順位が設定されています。例としては以下のような表示方法があります。
- あるユーザーの投稿に対するアクション(シェアやコメント、いいね!など)が多い場合にそのユーザーの投稿を優先的に表示させる
- 特定の話題に何かのアクションをすると、そのトピックに関連する他の投稿を表示させる(例:野球の投稿に反応をよくする人には野球の話題を表示させるなど)
- Facebook上での位置情報等に基づいて、関連度の高い投稿を表示させる(例:近くで実施されているイベントに関する投稿を表示させるなど)
出典:Facebook 投稿や広告が表示される理由およびコンテンツ表示の背景情報と設定について / Facebook ニュースフィードがよりカスタマイズしやすく
投稿だけでなく、おすすめユーザーや広告などについても、同じようにパーソナライズされた表示方法をとられています。
また、FacebookのWEBサイトにはニュースフィードの表示について以下のような言及もあり、ユーザー毎にパーソナライズされた表示を行うことに対して注力していることがわかります。
- ニュースフィードの目指すところは利用者に最も関連のある投稿を表示することです。
引用:Facebook 投稿や広告が表示される理由およびコンテンツ表示の背景情報と設定について - Facebook社は利用者がプラットフォーム上での体験を管理し、より自分自身に合った体験をしていただくことがウェルビーイングの向上につながると考えており、利用者へより多くの管理と情報を提供できるよう、引き続き開発・改善に努めてまいります。
引用:Facebook ニュースフィードがよりカスタマイズしやすく
Facebook以外のSNS(instagramやTiktokなど)でも、他の人が投稿した写真や動画は時系列順ではなく、そのユーザーのアクション(フォローやいいね!など)をもとに、関心が高そうな順に表示しています。
様々な情報があふれるSNSには、そのユーザーにとって関心のない投稿もたくさん存在します。しかし、興味のない投稿ばかりが表示されていると、多くのユーザーはそのうち利用しなくなってしまうことでしょう。
そのためSNSでは、このようなパーソナライズされた表示方法をとり入れることで、それぞれのユーザーが自分に合った投稿をすぐに見ることができるようにして、満足度向上を目指しているのです。
2-5.コンテンツのレコメンド表示
NetflixやSpotify、SmartNewsなど、多くのコンテンツを保有しているサービスやメディアも、ユーザーにコンテンツを表示させる際にそのレコメンド機能をパーソナライズしています。
- 多くのコンテンツを保有しているサービスやメディアにおけるレコメンド表示とは
ユーザーが過去に選んだり良い評価をしたコンテンツをもとに、同じようなジャンルのコンテンツや、同じような趣向を持つユーザーが選んでいるコンテンツを表示させたりすること
例えば世界最大級の動画配信サービスである「Netflix」では、以下のような項目を考慮してユーザーごとにおすすめの作品を表示します。
- Netflixの利用状況 (視聴履歴や他の作品をどのように評価したかなど)
- 同様の趣向や好みを持つ他のユーザー
- ジャンルやカテゴリー、出演者や公開年などといった、作品に関する情報
- 視聴する時間帯
- 視聴するデバイス
- 視聴時間の長さ
- など
そのためユーザーは、何を観たいか考えて検索をするという手間をかけることなく、自動で表示される自分の好みに合う作品の中から手軽に好きなものを選ぶことができるのです。
2-6.個人の嗜好や背景に合った商品の提供
最後に紹介するのは、商品そのものをユーザーの嗜好に合わせてパーソナライズするという方法です。
これは、ホテルや飲食店、百貨店などのサービス業では昔からよく行われており、例えば以下のようなシチュエーションが想像できるでしょう。
- 新婚旅行で宿泊している顧客に特別なベッドメイキングをする
- 小さなお子様のお寿司からはワサビを抜く
- 過去の購入履歴をもとに顧客の好みそうな絵画を紹介する
ただしその性質上どうしても従業員の能力に依存してしまったり、大規模に展開することは難しかったりといった課題がありました。
しかし最近では、AI(人工知能)を用いてユーザーに合わせた商品を提供するサービスも登場しています。
例えばお菓子のサブスクリプション「snaq.me(スナックミー)」では、ユーザーの好みを知るためのアンケートの結果や、送付したお菓子への評価などのデータをもとに、一人ひとりに合ったお菓子の詰め合わせを届けるサービスを提供しています。
誰にでも同じものを提供するのではなく、個人の好みに合わせてパーソナライズした商品やサービスを提供すると顧客満足度は高まります。
今後はどんどん、従来対面ビジネスで行われていたことがオンラインでも実施されるようになっていくでしょう。
3.パーソナライズドマーケティングが重要な5つの理由
パーソナライズドマーケティングがどのようなものか、施策例を通して解説してきました。しかし、自分の仕事にも質の良いパーソナライズドマーケティングをとり入れるためには、まずはその重要性を理解しておくことが大切です。
パーソナライズドマーケティングが重要な理由は以下の5点です。
- ユーザーの「探す」手間を省くことで利便性が高まる
- ユーザーとの関係性が強固になる
- 他社への流出防止になる
- 商品開発の精度が高まる
- コモディティ化されたものに魅力を感じないユーザーへの有効なアプローチになる
詳しくは以下で解説していきます。
3-1.ユーザーの「探す」手間を省くことで利便性が高まる
パーソナライズドマーケティングが重要だと考えられている理由の中でも特に大切なものが、「ユーザーが自分で『探す』手間を省く」という価値です。
現代社会では、実に多くの情報があふれています。そのため、それら全ての情報を一覧で提示されても、そこから自分の欲しいものを探し出すのは非常に骨が折れる作業になります。
そこで登場したのがパーソナライズドマーケティングです。例えば広告に活用すると、以下のようにユーザーにとっての利便性が向上します。
- 友人への結婚祝いに何を贈ろうかと考えて昼休みに検索したが、仕事が始まったため別の作業を始めた
- → 終業後にニュースを見ていたら結婚祝いギフトの広告が表示された
- → 結婚祝いを贈ろうと思っていたことを思い出して購入できた
- あるビジネスセミナーに申し込んだところ、似たようなテーマの別のセミナーの広告が表示された
- → 興味のある内容だったので申し込んだ
欲しいと思っていたものを検索しなくても、自動で表示された広告をクリックすればすぐにそのページに移動することができたり、興味のあるものをわざわざ調べなくても情報を提示してもらえたりすると便利ですよね。このようにパーソナライズされた広告はユーザーの「探す」という手間を省いてくれるのです。
- ユーザーが求める情報を先回りして提示する
- → ユーザーの利便性が高まり利用されやすくなる
上記のようにユーザーにとっての利便性を高めると広告のクリック率向上にもつながるため、広告主側にとっても大きなメリットとなります。こういった点が、パーソナライズドマーケティングが重要だと考えられている理由のうちのひとつなのです。
3-2.ユーザーとの関係性が強固になる
パーソナライズドマーケティングが重要である2つ目の理由は、うまく活用するとユーザーとの関係性が強固になるという点です。
例えばSpotifyやApple Musicなどの音楽配信サービスには、ユーザーの好みに合った音楽を集めたプレイリストを自動で作成してレコメンドしてくれるというパーソナライズ機能があります。
特にSpotifyのレコメンド機能は「そのユーザーの好み」だけでなく「好みが似ている他のユーザーが聴いた曲は何か」も考慮してレコメンドしてくれるので、自分好みの新しい曲を発見することができるとして多くのファンがついています。
実際にSpotifyの月間アクティブユーザー数は3億5,600万人に到達しており(2021年3月31日現在)、世界シェアトップの座をキープしています。
このようにユーザーは、自分に合ったレコメンドをしてくれるサービスや会社に対して愛着を感じたり、自分にとって有用だと考えてファンになったりする傾向があります。
- 質の高いパーソナライズサービスを提供する
- → ユーザーのロイヤルティが高まり関係性が強固になる
そのため質の高いパーソナライズサービスを提供することは、自社のユーザーとの関係性を強めるために非常に重要だと考えられるのです。
3-3.他社への流出防止になる
パーソナライズドマーケティングには「他社への流出防止」に役立つという側面もあります。
例えば、過去に利用したことのあるサービスを運営している会社から、以下のようなメールが毎週届いていた場合、あなたはどちらの会社のサービスを継続的に利用したいと思うでしょうか。
1.自分にとって関心のないサービスの広告ばかりを送ってくる会社
2.自分の仕事やプライベートに役立つ情報やサービスの紹介をしてくれる会社
多くの人は、1の「自分にとって関心のないサービスの広告ばかりを送ってくる会社」のことは「あまり役に立たない」「迷惑だ」と感じるのではないでしょうか。
逆に2の「自分の仕事やプライベートに役立つ情報やサービスの紹介をしてくれる会社」に対しては「この会社は自分が何を求めているのかわかってくれている」「この会社をずっと利用したい」という感情を抱くようになると思います。
- パーソナライズされた情報提供を心がける
- → 自社サービスを優先的に利用したいと思ってもらえるため他社への流出を防止できる
このように、ユーザーの状況やニーズに合った対応をすることで、サービス利用率や会社への信頼感が高まり、自社ユーザーが他社へ流出してしまうのを防止することができるのです。
3-4.商品開発の精度が高まる
パーソナライズドマーケティングを導入すると、ユーザー情報の収集や分析に注力することになります。
そうするとそれらの情報を商品開発にも効率的に活用できるため、よりユーザーの求める商品を開発することができるようになるというメリットもあります。
具体的な活用方法の例としては、以下のようなシーンが想定できます。
- 40代以上の女性の趣向を分析した結果、夏に向けてシミやシワ対策の化粧品のニーズが高いということがわかったため、それらの要素にフォーカスした商品を開発する
- 法人名で登録しているユーザーの購買履歴を分析したところ、同じ商品を複数購入することが多いという結果が出たため、法人向けの大容量パックを開発する
属性や居住地域、閲覧履歴、購買履歴などのデータは、ユーザーを理解するための情報の宝庫です。これらをもとに表面的な動向だけでなく、潜在的なニーズを見つけることを意識すると、商品力にも磨きをかけていくことができるでしょう。
- パーソナライズドマーケティングのためにユーザー分析に注力する
- → ユーザー理解が促進されて新たな商品開発に役立つ
現代は、「誰にでも使ってもらえる汎用的なもの」の価値は下がりつつあり、「その人にぴったりと当てはまるもの」を提供できる企業が勝ち残る時代です。
個人のニーズに合った商品開発を精度高く行うためにも、パーソナライズドマーケティングは重要になってくるのです。
3-5.コモディティ化されたものに魅力を感じないユーザーへの有効なアプローチになる
パーソナライズドマーケティングは、コモディティ化されたものに魅力を感じないユーザーへのアプローチ手段の1つとしても重要です。
例えば前半で紹介したおやつのサブスクリプションサービス「snaq.me(スナックミー)」では以下のような方法で、既存の大衆的なお菓子では満足できない層へのアプローチに成功しています。
- ユーザーのフィードバック(届いたおやつへの評価)や、マイページ内からのリクエストなどによってパーソナライズが進む
- 100人いれば100通りの組み合わせが存在し、ユーザーには毎回違ったものが届く
出典:日本食糧新聞電子版 食品D2Cとして注目のおやつ体験BOX「snaq.me(スナックミー)」
このように「大衆に好まれる大量生産されたモノ」ではなく「自分向けにアレンジされたモノや体験」に価値を感じるユーザーへのアプローチ方法として、パーソナライズドマーケティングは非常に有効な手段だといえます。
- パーソナライズされたモノや体験を提供する
- → コモディティ化されたモノに価値を感じないユーザーに響きやすくなる
戦後の高度経済成長期の日本は、大衆向けの商品を大量生産すればモノが売れる時代でしたが、現代では消費者のニーズは多様化しているためそうしたマーケティングでは通用しなくなっています。今後ますますパーソナライズの重要性は高まっていくでしょう。
4.BtoB・BtoCにおけるパーソナライズドマーケティングの違い
パーソナライズドマーケティングが重要な理由についてお伝えしたことで、自らのビジネスにもとり入れたい!と思ったのではないでしょうか。
しかしパーソナライズドマーケティングは、実はビジネスモデルの違いによって、考慮すべきポイントが異なります。具体的には以下のような違いがあります。
詳しくは以下で解説していきます。
4-1.BtoBにおけるパーソナライズドマーケティング
BtoBにおけるパーソナライズドマーケティングでは、ターゲットは法人となります。まずは法人ユーザーの特性を見ていきましょう。
- 閲覧、利用しているユーザー本人が決裁権を持たない場合がある
- 最初のタッチポイントから購入の意思決定をするまでに時間がかかることがある
- ユーザー側の専門性が高い
例えばある製造業の総務部の社員が、研究所の社員100名が着用するための新しい作業着について調べているとします。その場合、通常はその社員が自分の権限のみで大量の作業着を発注するという行動はとらず、以下のようなステップを踏むことになります。
- いくつかの商品・サービスの品質と単価を比較する
- それらの情報を資料などにまとめて上長に提示し、決裁を仰ぐ
- 商品が購入される
そのため、法人をターゲットとしてパーソナライズドマーケティングを活用する場合は、以下のような対応をとると成約率が高まるでしょう。
- ユーザーの関心度に応じて提供する情報を変える
- → 展示会やオンラインイベントでメールアドレス登録をしたなど、自社のサービスへの関心度がまだ低そうな人に対しては、トレンドの把握に役立つ一般的な勉強会の案内をメールで送り、自社WEBサイトにユーザー登録をしたなど、既にサービスへの関心度が高い人に対しては個別面談の案内を送る、など
- ユーザーの行動に応じて最適なアプローチをとる
- → 自社サイトの料金表をダウンロードしたユーザーは購入検討度合いが高いと考えられるため、ダウンロードしたユーザーにはすぐにメールで追加アプローチをする(期間限定の特典や、実際に導入したことで成功した他社の事例を送るなど)
4-2.BtoCにおけるパーソナライズドマーケティング
法人ではなく個人がターゲットであるBtoCビジネスの場合は、考慮すべき点が異なります。個人ユーザーの特性は以下の通りです。
- 閲覧、利用しているユーザー本人が購入の決裁権を持つ
- 比較的短時間で購入するかどうかを決める
- 合理的な判断をするとは限らず、感情的・感覚的な要素が意思決定に影響することがある
そのため、個人をターゲットとする場合は、以下のポイントを意識することが大切です。
- ユーザー本人の趣味や趣向に合った提案を精度高く行う
- 個人の属性(初回顧客かリピート顧客か)やタイミング(朝の通勤時間帯か夜のリラックスできる時間帯か)に応じて異なるクーポンやオファーを提示する
- 合理的・論理的なアプローチだけでなく、感情に訴えかける文言やデザインも活用する
パーソナライズドマーケティングは、対象が法人の場合でも個人の場合でも有効に活用できますが、特性が異なりますので、これらの点を考慮してご自身のビジネスモデルに合った方法をとり入れるようにしましょう。
5.パーソナライズドマーケティングを実行する際の2つの注意点
パーソナライズドマーケティングの具体的な施策例や、近年重要だとされている理由、BtoBとBtoCの違いなどについて知ることで、さらに理解を深められたのではないでしょうか。
これまで述べてきたようにパーソナライズドマーケティングは、ユーザーの利便性向上や関係性の構築に役立ちますが、実は注意点もあります。注意点を知らずにやみくもにとり入れると、かえってユーザーとの関係性が悪化してしまう場合もあるため、気をつけるようにしましょう。
具体的には以下の2点です。
- ユーザーの望む情報ではない場合がある
- ユーザーにネガティブな感情を抱かせる場合もある
詳しくは以下で解説していきます。
5-1.ユーザーの望む情報ではない場合がある
パーソナライズドマーケティングでは、ユーザーの登録情報や過去の行動履歴にもとづいて提示する情報や商品を変更します。
しかし、ヒトの好みやニーズはずっと同じというわけではありません。そのため、ユーザーの状況や趣味が変化したときに対応しきれなくなる場合があります。
例えば以下のような場合が考えられます。
- 大阪から東京に引っ越したユーザーに対して、過去の登録住所をもとに大阪のイベントを紹介してしまう
- 既に結婚式を終えたユーザーに対して、結婚式の引き出物に関する広告を配信してしまう
- 出産したため子育てに関する情報を得たいユーザーに対して、出産したという事実がわからないためニーズにこたえられない情報提示を続けてしまう
こういった問題を起こさないようにするためには、ユーザー自身に登録情報を定期的に見直してもらったり、状況の変化を素早く察知するためにこまめにアンケートをとる仕組みを取り入れたりすると良いでしょう。
5-2.ユーザーにネガティブな感情を抱かせる場合もある
2つめの注意点は、パーソナライズな提案や広告が、ユーザーにネガティブな感情を抱かせる場合もあるという点です。
繰り返し同じような広告やコンテンツ、メールが自分のもとに届くと、「しつこい」「またこれか」「同じようなものばかり」といったマイナスの印象を抱いてしまうユーザーもいます。ユーザーとの関係を良好なものにするために行っている施策なのに、逆効果になってしまっては本末転倒です。
そのため、あまりにもコンテンツの種類が偏るようなことがないように表示頻度の設定を変えたり、メールの配信頻度を下げたりするなどの工夫をすると良いでしょう。
6.パーソナライズドマーケティングの活用方法
パーソナライズドマーケティングについて詳しく解説をしてきました。個別事例のイメージは掴んでいただけたと思いますので、次は実際にパーソナライズドマーケティングをどのように取り入れて活用すればどのような恩恵を受けることができるのかについて、具体的な例をもとにお伝えしていきたいと思います。
例えば、育児グッズの通販サイトを運営している会社の場合、以下のようなポイントでパーソナライズドマーケティングを活用することができます。
- 新規ユーザーを獲得するための広告配信
- ユーザーの会員登録情報をもとに表示する商品やクーポンを出し分ける
- パーソナライズされた内容のメールで信頼関係を構築する
具体的に見ていきましょう。
6-1.新規ユーザーを獲得するための広告配信
まずは自社の取り扱い商品(育児グッズ)に関心のあるユーザーを獲得する必要があります。今回の場合、ユーザーには自社の通販サイトへ訪問してもらいたいので、テレビやラジオ、雑誌などの他の媒体よりも、同じインターネット上で広告を出すほうが効果が高いでしょう。
そこで有効なのがパーソナライズド広告です。子育てをしていない大学生や高齢者が閲覧するサイトに広告を出しても自社の売上には結び付きませんので、育児の話題に関心のある層を狙って広告を出稿することが大切です。
育児系の話題を取り扱っているメディアを選択して広告を配信したり、育児に関する単語を検索した人に向けたパーソナライズド広告を出すことで、より自社商品と相性の良いユーザーを獲得することができるようになります。
6-2.ユーザーの会員登録情報をもとに表示する商品やクーポンを出し分ける
ユーザーを獲得したら、そのユーザーが好みそうな商品をレコメンドしたり、ベストなタイミングでクーポンを配信したりすることで、購入率を高めることができます。
そのためには訪問してくれた人の情報を入手し、それに合わせて情報を出し分ける必要があります。「会員登録すると割引クーポンをプレゼント」などのオファーや、簡単なポップアップアンケートなどでユーザーの情報を入手し、そのユーザーに合った商品を表示できるようにしましょう。
6-3.パーソナライズされた内容のメールで信頼関係を構築する
パーソナライズの手法は、自社WEBサイトに導入するだけでなくメール配信時にも非常に役立ちます。個人に最適な内容のメールを送りユーザーとの関係性を構築すると、リピーターになってくれる可能性が高くなるからです。
例えば以下のように、ユーザーの属性や購入履歴にもとづいて異なる内容のメールを送ります。
- 一度も購入していないユーザーには「初回購入時だけ使えるお得なクーポン」を送る
- 商品の購入履歴があるユーザーには「その商品の使い方や一緒に使うと便利な商品に関する情報」を送る
- ユーザーの子供の年齢に合わせて異なる商品をおすすめする
ユーザーは「自分をひとりの顧客として理解してくれている」「自分のニーズに合った情報を提供してくれる」と感じると、その企業への信頼感や利用率が高まります。
このようにパーソナライズドマーケティングは、新規ユーザーの獲得から自社のファンになってもらうまで、あらゆる場面で役立つのです。
7.パーソナライズドマーケティングをとり入れる方法
パーソナライズドマーケティングの具体的な活用方法について詳しく解説しました。ご自身のビジネスに活かすための全体的なイメージが湧いてきたのではないでしょうか。
しかし、こういった作業をすべて手作業で行うのは困難です。そこで、実際にパーソナライズドマーケティングを取り入れている会社は必ずと言ってもいいほど、マーケティングオートメーションを利用しています。
- <マーケティングオートメーションとは>
新規ユーザーの獲得や見込み客の育成のための、Eメール配信や広告出稿、顧客のフェーズに応じたコンテンツの出し分けなど、マーケティング施策をデジタルで自動化するためのツール
従来は人の手で作業していたものですが、システム化することで人件費の削減やミスの低減にもつながるため、近年はWEB上でビジネスを行う場合には欠かせないツールとなっています。
例えば、衣類や雑貨のセレクトショップであるSHIPSでは、マーケティングオートメーションツールを使用して以下のようなパーソナライズドマーケティング施策を実施しています。
①定期的にメルマガを送付
最終購買履歴と性別に合わせたコンテンツを週に1回メールで配信
全ての会員に同じメッセージを送るよりも1to1のメッセージになるという利点があります。
②購入フォローメールの送信
実店舗で購入された後に購入のお礼だけでなく、購入商品に紐づいたコーディネイトの提案をメールで配信
ユーザーの購入した商品を使ったコーディネイト提案を行うことで、ユーザーに対して「あなた向けの特別な情報を送っています」という印象を与えることができます。
このような作業を自動で行うことができるようにSHIPSが導入したのが、チーターデジタルの「Cheetah Digital by Marigold 」です。
さらにチーターデジタルのソリューション「Marigold Personalization」は、以下の3つの機能で質の高いパーソナライズマーケティグを実現することができます。
- リアルタイム・パーソナライゼーション
Webやメールでの行動をもとにリアルタイムでオファーや商品のレコメンドをパーソナライズ化 - ジャーニー・デザイナー
機械学習によってユーザーのカスタマージャーニーを最適化 - インテリジェント・オファー
コンバージョンを促進するためにユーザーに応じた最適なオファーを選択
このサービスを導入すると、機械学習と自動化されたジャーニーを活用することで顧客と1to1でつながることができます。
またチーターデジタルでは、マーケティングオートメーションツールの提供だけでなく、導入や運用支援まで行うため、ITに慣れていない担当者でも成果が出せる仕組みになっています。
→詳しくはこちらのページをご覧ください。
8.まとめ
パーソナライズドマーケティングとは、顧客ひとりひとりの属性や嗜好、購買や行動の履歴などにあわせて、最適な情報やサービスを提供する仕組みづくりのことです。>
この記事では、パーソナライズドマーケティングに関する理解を深めていただくため、以下について解説してきました。
- パーソナライズド広告
- メールマーケティングのパーソナライズ化
- ECサイトにおける商品のレコメンド表示
- SNSにおけるパーソナライズ表示
- コンテンツのレコメンド表示
- 個人の嗜好や背景に合った商品の提供
- ユーザーの「探す」手間を省くことで利便性が高まる
- ユーザーとの関係性が強固になる
- 他社への流出防止になる
- 商品開発の精度が高まる
- コモディティ化されたものに魅力を感じないユーザーへの有効なアプローチになる
さらに「BtoB・BtoCにおけるパーソナライズドマーケティングの違い」についても解説し、実際に取り入れてみたいとお考えの方のために以下についても説明しました。
- ユーザーの望む情報ではない場合がある
- ユーザーにネガティブな感情を抱かせる場合もある
そして、早速活用するための全体像をイメージしやすくするために「パーソナライズドマーケティングの具体的な活用方法」を解説し、そのためにはマーケティングオートメーションツールを利用するのがおすすめであるということもお伝えしました。
パーソナライズドマーケティングの概要や重要性を理解することができたことで、実際に自分の仕事への活かし方のイメージを掴めるようになったのではないでしょうか。あなたのビジネスにパーソナライズドマーケティングを上手にとりいれて、売上やロイヤルティの向上を目指していきましょう。