すべての企業は、日々膨大な量の顧客データを取得しています。最も成功している企業は、あらゆるチャネルやタッチポイントを通じて顧客データを取得するためのプロセスやプラットフォームに投資をしています。顧客データの活用方法は多義に渡りますが、顧客理解を深める顧客セグメンテーションの改善にも有効です。
様々なタッチポイントで収集される、顧客エンゲージメント データ(トランザクションデータ、顧客の行動データ、メッセージ・キャンペーンの反応データ)を活用することで、顧客セグメンテーションが改善され、潜在的価値の高い顧客を特定し、ターゲットを絞ったより効果的なマーケティング プランを策定することができます。
Ascendant Loyalty Marketingとのブログシリーズの第1回目となる本記事では、顧客エンゲージメント データを活用した新しい顧客セグメンテーション方法を解説します。
売上ベースのセグメンテーション
まず顧客セグメンテーションの理解を深めるために、最も標準的な手法である、顧客の購買金額をベースにしたセグメンテーションをご紹介します。会員プログラムを運営している企業であれば、下の図のようにどの会員グループがどのくらいの売り上げを占めているのかを構造化することができるはずです。
この方法により各セグメントへの現在の投資価値を把握することができます。また、ここに顧客のデモグラフィックデータや過去に購入した製品情報を重ねることで、セグメントごとの顧客ペルソナを作ることができ、さらなる顧客理解を促進させることができます。
顧客エンゲージメントをベースにしたセグメンテーション
次にご紹介するセグメンテーション方法は、顧客エンゲージメント レベルをベースにしたものです。エンゲージメントを測る指標はそれぞれの業界や企業により異なりますが、様々な顧客タッチポイントから収集したデータを用いることで、それぞれの会員グループにエンゲージメントレベル(ブランドとのつながりの深さ)を組み込むことが可能になります。
このセグメンテーション手法の最も大きな効果は、購買金額だけでは見えない潜在的な顧客層を可視化できる点です。例えば、過去の購買金額が低いTrial Customerグループであっても、その中からエンゲージメント レベルが高い顧客層を把握することができれば、一定の売上予測を立てることができます。
売上に貢献する現在の価値と潜在的な価値を可視化する
次の図は、上記で紹介した売上金額とエンゲージメントレベルの二つを掛け合わせ、各顧客セグメントにどれだけの投資価値があるのかを示したものです。
ここで注目すべきなのは、赤で囲まれている右下のボックス内に位置する緑の顧客セグメントです。このセグメントの顧客は、過去の購入金額は他と比べて高くはないものの、エンゲージメントレベルが高いため将来的に商品を購入する可能性が高いと分析できます。
このようにセグメントごとの潜在的な顧客価値を把握することで、どの会員グループにターゲットを絞るべきかを細かく可視化することができ、より売上に効果をもたらすマーケティング プランの選定ができるようになります。
Amazonの顧客エンゲージメント データ活用事例
最後に顧客エンゲージメントデータを収集・統合し、顧客体験のパーソナライズと顧客セグメンテーションの改善を行っているAmazonの事例をご紹介します。
Amazonの書評サイト「Goodreads」では、読者がプロフィールを作成し、自分の読んだ本の評価やレビューを他のユーザーと共有したり、将来読みたい本のリストを保存することができます。
Amazonはこうした購買以外の顧客行動を細かく把握することで、売上ベースで構成されていた顧客セグメンテーションにエンゲージメント レベルを追加し、より売上貢献度が高い顧客を予測できるようになりました。また、収集したデータには、デモグラ情報や顧客の心理的側面に関する情報が含まれているためユーザー理解を向上させることができます。
顧客セグメンテーションの改善だけではなく、Amazonではこれらの顧客エンゲージメントデータを使い、ユーザーごとにパーソナライズされた読書コンテンツをレコメンドすることで、ユーザー自身にベネフィットを感じてもらえるブランド体験の好循環を作り出すことができました。
顧客エンゲージメントデータを使い顧客の潜在価値を分析する
このように、顧客セグメンテーションは過去の購入金額のみを反映するだけでなく、顧客の潜在的な可能性についての洞察を分析できるよう設計されている必要があります。顧客エンゲージメントデータの活用は、顧客の潜在的な価値についてより実用的な洞察を導くための効果的な手段です。様々なタッチポイントから収集される顧客エンゲージメントデータを使い、会員グループごとのエンゲージメント レベルを測ることで、より深い顧客理解ができ、ビジネスの収益を高めることができます。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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ブログシリーズ:
– その1: 潜在顧客を可視化する顧客エンゲージメント データの活用(←本記事)
– その2: 顧客ロイヤルティを向上させるソフトベネフィットとパーソナライゼーション
– その3: LTV(顧客生涯価値)をLTVを正しく計測するために必要な5つの指標
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