近年、消費者が個人データの安全性について心配するに足る理由が増え続けています。ケンブリッジ・アナリティカや国家安全保障局(NSA)が関わったデータ・スキャンダルは、消費者を不安に陥れました。
これは、マーケティング担当者を難しいポジションに追いやりました。消費者は、マーケティング担当者が多くの顧客データを収集して管理する必要がある、シームレスでパーソナライズされたクロスチャネルの体験を期待しています。しかし一方では、個人データを収集するあらゆる組織に対する警戒を募らせているのです。
「マーケティング企業として、私たちに対する信頼は過去10年間で最低レベルに近いと言えるでしょう」と、Cheetah Digital by Marigold の戦略サービス部門シニアディレクターのJacob Davisは述べています。
消費者は自分たちの恐怖に対するスケープゴートを必要としており、残念なことにマーケティング担当者がそのスケープゴートになっています。「私が信頼の低下についてマーケティング担当者を責めることはありませんが、顧客はそうではありません」と、Davisは言います。マーケティング担当者は、現在の事態を憂慮するのではなく、この機会にマーケティング活動を評価して顧客の信頼に足るものに改善すべきです。
信頼は失われる一方
では、マーケティング担当者が消費者と信頼関係を築くにはどうすればいいでしょうか?
Davisにとって、「消費者の信頼を築く」という考え方は問題ではありません。問題なのは、失う量と同じ程度の信頼を構築できていないという点です。彼は次のように語っています。「顧客が任意のオプトインチャネルを通じて自発的に自分の情報を提供した場合、顧客は皆さんのブランドを信頼していることを皆さんに伝えています。しかし、多くのブランドがその信頼をあまりにも急速に失っているのです。」
信頼はどのように失われるのでしょうか?「それはデータの誤用、間違ったデータ、またはデータの使用不足によって引き起こされます」と、Davisは述べています。彼はこの典型として、収集されたデータと使用されるデータとの間に相違があることを指摘しています。「名前を聞かれたのにも関わらず、その名前で呼びかけられることがなければ、それは本質的におかしいと感じます。」
「皆さんがなぜそのやり方で顧客とコミュニケーションを取っているのかを考えないと、必然的にデータを誤用することになります。間違ったチャネルでデータを共有したり、連絡しないでほしいと言われた相手に連絡を取ってしまったりします。」
さらに、マーケティングコミュニケーションが取引関係を超えて不気味なものになると、それは信頼をさらに低下させます。「データの誤用について言えば、不気味さは最大の罪です」と、Davisは言います。「それはすべて、そもそも皆さんがなぜ顧客とコミュニケーションを取りたいのかをわかっていないことから生じています。」
信頼を築く最善の方法は、使用しないデータは収集しない、データをどのように使用するかを明確にする、そして顧客に完全な管理権限を与えることです。
透明性を保ち、顧客に管理させましょう
ワシントン大学のマーケティングの教授であるRobert Palmatier氏は、消費者の信頼とデータのプライバシーに関する広範な研究を行い、最も重要な2つの要素は透明性と管理であることを発見しました。Palmatier教授は次のように述べています。「信頼を築く最善の方法は、使用しないデータは収集しない、データをどのように使用するかを明確にする、そして顧客に完全な管理権限を与えることです。」
彼の目から見ると、データ収集は本質的に信頼を低下させるものだと言います。教授は次のように述べています。「データを収集するだけでは、信頼関係に悪影響を及ぼします。ただし透明性と管理によって、その悪影響を抑えることができます。」
企業は、収集したどのデータがどのように使用されるかを非常に明確にする必要があり、アクセス可能なオプトアウトプロセスや堅牢なプリファレンスセンターを通じて、消費者に問題について発言権を与える必要があります。Palmatier教授は、「消費者は時間を無駄にしたくないのです。データを使って消費者の体験をカスタマイズし、その意図をわかりやすく伝えれば、価値があると示すことができます」と述べています。
皆さんが進んで意図を伝えることにより、顧客はデータを誤用されるのではないかと感じにくくなります。しかし、マーケティング担当者が約束を果たすことは不可欠です。「データ取得のプロセス全体でこのような方針を伝え始めると、それが組織全体に浸透するようになります」と、Davisは言います。「消費者に名前を尋ねる理由がパーソナライズであることを伝えた場合、どのようにコミュニケーションをパーソナライズすることができるかを考える必要があります。」
データを共有する消費者のメリットを示す
顧客には自分のデータを皆さんと共有したいと思える理由が必要であり、そのインセンティブはさまざまな方法で確立することができます。Davisは、インセンティブを「消費者が彼らのデータを共有しているあらゆる関係から得られるユニークな価値」と定義しています。メールアドレスのようなものを共有する場合に顧客が得られるメリットを明確にする必要があります。
言い換えると、オプトアウトを選択した場合、顧客は何を失うでしょうか?
インセンティブは金銭的なものでも構いません。顧客はメールアドレスを共有すると独占的な割引を得ることができますが、価値が深まると長期的なメリットは大きくなります。「割引だけでは、消費者との強い関係を築くことはできず、適切にコミュニケーションを取ることはできません」と、Davisは言います。「消費者がコンテンツ、システム、広告にアクセスして、自分自身よりも大きな文化の一部であると感じられた場合、彼らに対して適切な方法でマーケティング活動をしているということになります。」
この考え方は、常に最優先事項でなければなりません。どうすれば顧客が利益を得られるかという点を真に最優先にしなければ、顧客を優先していると主張することはできません。
信頼を回復する方法
それにもかかわらず、信頼が失われることもあります。顧客の信頼を失った場合、どのようにしてそれがわかるでしょうか?
Davisは次のように述べています。「信頼を失ったのではないかと心配しているのであれば、その場合はおそらく大幅に失っているでしょう。あなたがその立場だったら、最も重要なステップは、失われた信頼を認め、それに対して誠実であることです。次のステップは、約束をうまく果たすことです。これは、魅力的で、パーソナライズされた、そして関連するすべてのチャネルにわたるコミュニケーションソースによって実現されます。」
私たちはマーケティング企業としては信頼の面で最低を記録したかもしれませんが、Davisは今後向上すると予想しています。
Facebookのような犯罪者がデータの誤用を認めた今、ブランドは一層、隠し事をしないことが求められています。「私は今後、こうした影響や、企業がより適切な方法で顧客を扱うことを法的に義務付けられているという事実に対する認識がより高まると考えています。ブランドへの信頼は最低レベルに近づいていますが、近いうちに信頼を回復できるはずです」と、Davisは述べています。