メールにおけるビジュアルエクスペリエンスの進化
10年前のデジタルマーケターは、2つのメールクリエイティブの課題に悩まされていました。ひとつは画像読み込みの技術的な課題。顧客が画像読み込みに待たされることなくすぐにメールを読めることは重要です。しかし、当時は技術的な問題で凝ったクリエイティブには読み込みに時間がかかり、結果としてメールのビジュアルエクスペリエンス実現の足を引っ張っていました。
そして、もうひとつはデータ活用の課題です。当時は、データベースを参照し顧客にあわせた口座残高をメールに記載することはできましたが、そのデータを画像と組み合わせて魅力的なビジュアルエクスペリエンスを作り出す術がありませんでした。
それからデジタルマーケティングの技術は劇的に進化しました。今日では先述した2つの課題はクリアされ、データを活用して顧客と真につながる美しく視覚的な1to1のメールエクスペリエンスを実現することが可能になりました。これらの体験は、目の肥えた現代の顧客の注目を集めるためには非常に重要です。
次の章からは、ビジュアルとデータを結びつける3つの成功事例をご紹介します。
1. インフォグラフィックで顧客の成功を支援する
人間は視覚的に優れた生き物で、視覚情報を簡単に理解することができます。理解しやすいインフォグラフィックが台頭している理由もここにあります。インフォグラフィックは、人々にとって重要なデータを簡潔に要約しています。インフォグラフィックに顧客のアクティビティを反映させることは、ただ記憶に残るだけでなく、顧客が何かしらの目標(メンバーシッププログラムのランクアップなど)を達成するのに役立ちます。
この優れた成功事例に、スマートホームサービスプロバイダのADTの施策があります。ADTはMovable InkとCheetah Digital by Marigold のクライアントです。彼らは、セキュリティシステムを購入した顧客が、より多くのメリットを得られるようサポートするとともに、セキュリティシステムの起動頻度増加を促したいと考えていました。
そこで、顧客自身の起動頻度と他ユーザーの頻度を比較した月間利用明細のインフォグラフィックを作成し、システム使用に役立つヒントとともにメールでお知らせしました。その結果、メールを受け取った顧客の82%が「メールが役立つ」と回答しました。
このように、ビジュアルでデータをより視覚的に表現することにより顧客の行動を促すことができます。データを活用したインフォグラフィックは、顧客が製品・サービスをより活用し、最終的にブランドとの関係を深めるのに効果的です。
2. リアルタイムかつインテリジェントなクリエイティブで緊迫感を高める
顧客に関連するデータを提供しましょう。先述の事例のように、画像を使用してそのデータに命を吹き込むのが効果的です。そして、もっと顧客の関心を引きたい場合は、さらに在庫状況などのリアルタイム要素を画像に追加して、顧客の迅速な反応を促すこともできます。
例えば、航空会社から送られる、フライトの座席アップグレードを促すプロモーションメール。プレミアムシートとエコノミーシートの違いを視覚的に訴えるシートマップを含むメールは、それがないメールよりもはるかに効果的です。ただし、シートマップをリアルタイムで自動更新する場合、顧客がメールで見る内容とWebサイト上の空席情報に相違がないよう注意が必要です。
利用可能なプレミアムシートの数が限られていることを一目で確認できるため、顧客が即座にアップグレードする可能性が高くなります。
3. ウェルカムメールで忘れられない第一印象を与える
人々を魅了するのはマーケターの仕事です。絶妙なビジュアルで注目を集めるブランドは、その分野の革新者とみなされます。ナイキを例にとってみましょう。同社は常にビジュアルファーストのブランドであり、話題を呼んだコリン・キャパニックとのキャンペーンはインパクトのあるクリエイティブの可能性を示しています。
そのような記憶に残る体験を作り、顧客の声に耳を傾けていることを示す1つの方法が、視覚的なウェルカムメールです。顧客に最初のウェルカムメールを送るときには、あなたはすでに小さくても強力なデータを手に入れています。顧客の名前と位置情報に加えて、最近のWeb閲覧や購買行動についても把握しているかもしれません。
その行動データを視覚的かつ魅力的な方法でウェルカムメールに追加することで、早い段階で新しい顧客の注意を引くことができます。そして最初のウェルカムメールの後に、毎週のニュースレターのような定期メールで行動情報に基づいたコンテンツを送り、顧客に関連する有益な情報を届けることが可能になります。そのような行動情報に基づいたターゲティングコンテンツが素晴らしい要因は、顧客がメールを開くたびに関連する情報で内容が自動的に更新される点です。
次のステップ
メールでデータを活用したビジュアルエクスペリエンスを提供したい場合は、オープンなブレインストーミングセッションから始めましょう。ホワイトボードにすべてのデータポイントと、そのデータが更新される頻度をリストアップします。そして、思考の流れに身を任せてみましょう。
最後に、どのようなタイプのメールを作成する場合も、顧客を優先することを忘れないでください。データのためにデータを使用すべきではありません。本当に素晴らしい体験は、顧客とあなたのブランドの両方に利益をもたらし、より優れた結果に導きます。そして、一番重要なのは、それが真の1to1のつながりを築きあげるのに役立つということです。